3 生と死の同一性の象徴

  • 「場」の想像 2人の作家と三つの展示, 特集
  • 2021年8月18日
藤沢レオ「柱の研究―起源―」2021年

  前回紹介したロビー展示の姉妹展示ともいえる藤沢レオの個展が、札幌市のモエレ沼公園で29日まで開催されている。

   公園の敷地内の間伐材として切り取られた、オニグルミの木が金彩の上、無数に配置される。古来よりその実は貴重な栄養源として生命を支えてきた半面、銃身を支える部材としても用いられてきた。藤沢はその木の枝を生と死の同一性の象徴として捉え、赤土に見立てたレンガの破砕物の内部に、やはりここでもそれらを柱に見立て自立させている。

   中央に配されたその幹が完全に金に彩られる一方で、周囲に配された枝は木漏れ日の暗示として部分的な金彩が施される。空間全体としては、人工的な森の象徴のようにも映るが、実際のところそれらの枝は、どれも同一のオニグルミによって成立しているのだという。

   起源の象徴としての柱が同一体であるという内実は、世界ないし生命の始まりも、元をたどれば根は同じなのだという解釈もできなくはない。札幌市と苫小牧市の二つの展示に共通しているのは、価値観の変容を繰り返す時代における普遍的な価値や生きることの意味といった根源的な思索を探求する藤沢の制作態度であり、果たしてそこには現代人とそれを取り巻く社会への問い掛けが潜在している。(おわり)

  ※苫小牧市美術博物館学芸員 細矢久人

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