苫小牧市美術博物館の特別展「発掘された日本列島2021」と連動する当館のロビー展示(29日まで)では、遺物や遺構に着想を得た藤沢レオの5点の新作を紹介している。
市内樽前地区を拠点に活動する彫刻家藤沢は、《場の彫刻》のシリーズ(2014~)以来、一貫して柱をモチーフにした作品を手掛けてきた。原初の人間が文化的な生活を手にする、その始まりの象徴として柱を捉える藤沢は、「人類の祖先が初めて大地に木棒を立てた瞬間の輝かしさ」をそこに仮託し、新たな場の創造やその変容を探求している。
半円形の台座には、それぞれれんがの破砕物が敷き詰められており、柱を象徴するクルミの枝のほか藤沢の手による文化財の模刻が金彩の上、土の中から立ち現れるイメージで配置されている。自らの手で遺物を模倣し造形することについて藤沢は、当時の人々の創作の労苦や達成感を追体験した上で金彩を施すことにより、人類の起源やその英知を顕彰する意図がその背景にあると語る。
本展示では、館内で展示中の木製馬や土器・土偶を題材とする作品もご覧いただくことができる。両者の展示物を比べてみたとき、現在と過去、美術と考古といった境界を越えた人々の営みやものの見方などについて新たな気付きがあるのではないだろうか。
(苫小牧市美術博物館学芸員 細矢久人)