2018年9月に発生した胆振東部地震から間もなく3年を迎える。未曽有の自然災害に遭ったあの場所は―。そしてまちに根を張る人たちの思いは―。厚真、安平、むかわの被災3町の今をリポートする。
× ×
「地元で被災された町民のご寄付、お見舞いもあったし、いろんな方のご協力があったおかげでここまでこられた。(胆振東部地震から)3年たって、目標としている復旧事業(工事)は、だいたいめどが付きそう」―。厚真町新町にある「厚真神社」。禰宜(ねぎ)を務める中村昇洋さん(44)は現状をそう語る。
1895(明治28)年に同町朝日に建立され、1900(同33)年に新町に移った。約20カ所の集落の祭事に関わるなど地域住民の暮らしに深く根付いてきた歴史ある神社だ。
しかし、震度7を観測した胆振東部地震で社殿内を支える柱が傾いたほか、住居を兼ねた社務所も生活をできる状況ではなくなった。高さ6メートルほどの大鳥居は倒壊し、真っ二つに折れた。
再建には社殿の修復、解体した社務所の改築、神輿(みこし)殿の整備などで最低でも1億2000万円が見込まれたが、政教分離の原則などで直接の公的な支援は受けられない。高台にあることも考えた時、「果たして再建できるのだろうか、という不安しかなかった」と振り返る。特に発災から1年間は、ほぼ手付かずの状態が続いた。
これを受けて歴史ある神社を守ろうと、震災翌年の9月に立ち上げられたのが「厚真神社復旧復興奉賛会」だ。地元の経済人など有志が中心となり、町内の事業所回りやインターネットを使うなどして多方面からの資金集めを始めた。そうこうして何とか再建のめどが立ち、昨年7月に本殿を修復。従来の規模より狭くなったが、年末には自宅を兼ねた社務所も完成した。そして今年6月には高台の下にあり、被害が目に見えて大きかった鳥居も復旧した。震災前からあるこま犬などは後世に引き継ぐものとして残しつつ、何とか神社本来の姿を取り戻した。「被災した町のために何かをしてくれた人や、気に掛けて訪れる人には『おかげさまで』としか言えない。地元にいてそういう人たちにお会いできることがうれしい」と感謝してもし切れない思いだ。
昨年以降は、新型コロナウイルス感染拡大の影響でみこし渡御など催事が軒並み中止となっており、本当の復興はこの先になる見通し。「地震をきっかけに、当神社をいろんな方々が訪れてくれるようになった。これからは、にぎわいの創出など、良い方でいろんなことに挑戦していきたい。こういうことを考えられるのも、物理的なものが復旧したからですね」と笑みを浮かべる。
(随時掲載します)