苫小牧市内で3~8日に開かれた全国高校選抜アイスホッケー大会で、出場校から発生した新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)は拡大が続いている。大会事務局を務める市は感染防止のため、事前に独自の基本方針を作成した上で無観客とするなど対策を講じていたが、クラスターに発展。コロナ禍の大会運営の限界が浮き彫りになった。
同大会は「氷上の甲子園」と呼ばれ、「氷都」苫小牧が最も力を入れる大会の一つ。市は昨年度は中止したが、強豪大学へのスポーツ推薦を目指す3年生の最後のアピールの機会でもあり、「開催を望む声が少なくなかった」(市スポーツ都市推進課)。今年度は他競技のインターハイの状況も考慮し、2年ぶりの開催を決め、全国26チームから702人が出場した。
感染対策として無観客開催のほか、日本スポーツ協会や日本アイスホッケー連盟などの各ガイドラインを参考に基本方針を作り、各チームに順守を求めた。
同方針は健康チェックシートの書式を示し、参加者の大会2週間前からの記録の提出と期間中毎日の記入、提出を要請。試合中や休憩中を含めた留意点として▽指示は大声で出さない▽なるべく距離を置く―など細かく記し、宿泊時についても▽食事は時間差を付け、距離を置く▽ミーティングは広い部屋で換気、消毒に配慮―などと求めた。
白鳥王子アイスアリーナなど3会場も入場時の検温、控室、ベンチも試合ごとに消毒など対策。対戦チーム同士の接触を避けるため、施設によって受付の職員を増員し、入退出時の出入り口を完全に分けたり、時間差を求めたりした。
ただ、対策は各校の自主性に委ねられていたと指摘する声もあり、大会に参加した市外の学校関係者は「主催者はもっと厳格に対応すべきだったのではないか」と疑問を投げ掛ける。
結果として12日までに選手や教職員、大会関係者計67人の感染が判明。木村淳総合政策部長は10日、「感染対策を徹底したが、大変残念。市民に不安と心配をかける結果となり、おわび申し上げる」と陳謝した。
実行委は、無観客でも「けがや緊急時に対応可能な父母等でチームが指定する人」(3人以内)の入場を認めており、こうした関係者や大会運営スタッフ、報道関係者を含め1000人近くの入場者全員の名前と連絡先を把握。各地域の保健所はこの情報を踏まえて濃厚接触者を特定し、PCR検査を進めている。