久保木学さん(安平町早来出身)の現地リポート・野外活動と自然 12月は夏、白夜の季節 ペンギンが現れることも

  • 南極から, 特集
  • 2021年7月19日
宿営地に遊びに来たペンギン=久保木隊員撮影
宿営地に遊びに来たペンギン=久保木隊員撮影
南極の海の景色=久保木隊員撮影
南極の海の景色=久保木隊員撮影
宿営地=久保木隊員撮影
宿営地=久保木隊員撮影

  第62次南極地域観測隊(2020年11月~22年3月)に参加している東胆振出身隊員による現地リポートの4回目。4月から月1回ペースで、元小学校教員の柴田和宏さん(46)=苫小牧市澄川町=に昭和基地での暮らしについて紹介してもらったが、7月からは元航空自衛隊員の久保木学さん(55)=安平町早来=にバトンタッチする。今回のテーマは野外活動と自然。(随時掲載)

   前回までの柴田さんに引き続き、今回からは久保木が南極での野外活動や自然について話したいと思います。われわれが到着した12月は、南極では夏の期間になります。太陽は一日中沈まず白夜と呼ばれる時期でもあります。

   皆さんの南極のイメージでは、南極はすべて氷や雪で覆われた大地と思われている方も多いと思います。でも、夏の期間には雪が解けて沿岸には露岩地帯が現れます。

   私たちは幾つかのチームに分かれて、その露岩地帯に設置されている観測機器のメンテナンスやデータの回収を行ったり、地図の起点となるポイントを設置したり、既存のマークのペンキを塗り直したりといった作業を実施します。

   南極観測船「しらせ」に搭載されている海上自衛隊のヘリコプターに乗って、各露岩地帯に移動するのですが、途中の景色はとても壮観です。一面凍りついた海も夏期間には所々割れて海水面が見えます。海に浮かぶたくさんの巨大な氷山の中には、その上部の氷が解けて池のようになっているものもあります。その池の色は薄緑色に見えてとても神秘的です。大陸から流れ出る氷河は、ひょっとしたら崩れ落ちる瞬間を見られるかもしれないと期待させます。

   露岩地帯でテントを張って宿泊の準備をしていると思わぬ珍客が現れたりします。ペンギンです。ペンギンはとても好奇心旺盛なのか、離れた所にある自分たちの営巣地からひょこひょこと歩きながら近づいてくるのです。餌をあげたり、すぐそばに近づいたりすることは禁止されているので、私たちはちょっと離れてその様子をうかがいます。

   テントを張った場所から、数カ所に置かれている観測用の機器のある場所までは、重い機材を背負って歩いて移動しなければなりません。でも重くてつらいとか思ったことは一度もありません。なぜなら一歩踏み出すごとに今までに見たこともない素晴らしい景色が次々と目の前に現れ、ずっと感動しっ放しだからです。

   人の痕跡がまったくない自然のままの広大な大地や海は、いつまで眺めていても飽きることはありません。

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