アイヌ文化の復興と発展のナショナルセンターとして国が白老町に整備した民族共生象徴空間(ウポポイ)で17日、開業1周年の記念セレモニーとイベントが開かれた。ウポポイPRアンバダサーを務める俳優宇梶剛士さんらのトークショーや、アイヌ古式舞踊の上演といったプログラムが繰り広げられ、園内は節目を祝うムードに包まれた。
体験交流ホールで開かれた記念セレモニーには、関係者や一般来場者ら約200人が参加した。施設を運営するアイヌ民族文化財団(札幌市)の常本照樹理事長は主催者あいさつで、昨年7月12日の開業以降の入場者が25万人を超えたとした上で「アイヌ文化の継承と創造、発展へさらに力を注ぎたい」と話した。来賓で出席した加藤勝信官房長官は「アイヌ文化の素晴らしさを体験し、民族共生の理念に共感していただけるようコンテンツ充実、PR活動強化に取り組む」と政府の姿勢を強調した。引き続き、鈴木直道知事、大川勝北海道アイヌ協会理事長、戸田安彦白老町長が祝辞を述べた後、ウポポイの1年を振り返る動画やアイヌ古式舞踊が披露された。
園内では、ウポポイ開業までの歩みを伝えるパネル展、うちわなど記念グッズの配布、帯広市と浦河町の伝統舞踊保存会による古式舞踊公演といったイベントが繰り広げられ、来場者を楽しませた。体験交流ホールでは宇梶さん、ウポポイ公式キャラクター「トゥレッポん」を制作した絵本作家そらさん、同財団職員秋山里架さんによるトークショーも行われ、3人はアイヌ文化やウポポイへの期待について語り合った。
この中で、アイヌ文化伝承者を母に持つ宇梶さんは「アイヌは自然と共に生き、自然を大切にしてきた民族。その精神を多くの人に知ってほしい」と呼び掛けた。
関連行事では、「松浦武四郎inウポポイ」(三重県松阪市主催)と題し、アイヌ民族と交流を深めた幕末の探検家松浦武四郎を紹介するパネル展、講座などが開かれた。武四郎生誕地・松阪市の特産品「松坂もめん」の布コースターにアイヌ文様を刺しゅうする体験会も人気を呼び、札幌市の小学4年大沼優月さん(10)は「ウポポイに来たのは3度目。大好きなアイヌ文化をもっと知りたい」と笑顔を見せた。
テナントの飲食店では1周年を記念した特別メニューが提供された。