新型コロナウイルス再拡大を受け、政府が東京都に12日から8月22日まで4度目の緊急事態宣言を発令することになり、夏休み期間に首都圏からの集客を見込んでいた苫小牧市内の観光、レジャー、飲食店関係者らに困惑が広がっている。一方、道は同日まで、全道で「夏の再拡大防止特別対策」を実施。道民も札幌や首都圏との往来を控えるよう要請されており、市民から「いつまで自粛すればよいのか」とため息が漏れる。
商船三井フェリーが苫小牧港・西港を拠点に運航する苫小牧―大洗(茨城県)航路は東京、神奈川、埼玉、千葉からの利用客が約7割を占める。8月の予約は現時点で大洗発が14日に約100人、苫小牧発は12~16日に約250人~300人と、前年並みを確保しているが、苫小牧支店の安生秀明支店長(53)は「今後、予約キャンセルが出るかもしれない」と心配する。
首都圏のゴルファーにも人気の千歳空港カントリークラブ(植苗)は、コロナ禍で道外からの集客に苦戦中。それでも全体的な客足が今年に入って回復傾向だっただけに、●【99cb】橋雅樹支配人(66)は「東京に緊急事態宣言が発令されるのは残念」と言う。道内ゴルフ場の客足のピークは10月上旬までで、動向を注視する。
観光客、ゴルフ客も多く宿泊するスマイルホテル苫小牧(錦町)は、6月の稼働率が7割台、7月も予約段階で8割台と好調だが、関東方面からの予約はコロナ前の水準に戻っていないという。緊急事態宣言に伴うキャンセルは出ていないが、藤田裕行支配人(44)は「今後どうなるか」と不安を吐露した。
「北海の味 北のゐざかや」(大町)の女将(おかみ)深味裕美子さん(53)は「これからの季節、地元客よりもゴルフなどで訪れる道外客の方が多い印象で先行きが不安。予約キャンセルも出てきている厳しい状況だが何とかやっていくしかない」と述べた。
海の駅ぷらっとみなと市場(港町)の青谷尚人事務局長(58)は「今年も夏休み期間中は東京方面からの団体客を見込めない」とした上で、「我慢の限界なのか最近、札幌ナンバーの車やレンタカー(で訪れる観光客)が増えている」と指摘。「改めて感染対策を徹底させたい」と気を引き締めた。
5月16日から臨時休園しているノーザンホースパーク(美沢)は15日の再開に向けて準備中。繁忙期を前にした緊急事態宣言にもめげず、「来園者に安心して馬との触れ合い、アウトドアアクティビティーを楽しんでもらう」とした。
道はコロナ対策のまん延防止等重点措置解除後の12日以降も、札幌市内の飲食店に対する営業時間短縮要請を継続。有珠の沢町のアルバイト草刈佑介さん(23)は「わざわざ札幌まで足を運ぶ選択肢はなくなった。代わりに苫小牧の繁華街や自宅で飲む機会が増える」と話した。
「札幌市内の実家への帰省を迷っている」と語るのは、生後10カ月~7歳の3人を育てる拓勇東町の主婦水下訓子さん(36)。例年、夏休みは家族で3日間ほど実家に滞在してきたが昨年は見合わせ、「今年もどうしようか決めかねている。親に子どもを会わせたいけど、不安もある」と打ち明けた。
錦岡の苫小牧高専生金子快斗さん(18)は「来月、チケット当選者のみ場所公開という条件の東京の展示会に行く予定だったが、緊急事態宣言が出て迷っている。飛行機のチケットはまだ取っていないので悩みどころ」と頭を抱えた。