白老町の民族共生象徴空間(ウポポイ)の中核施設・国立アイヌ民族博物館で3日、「ゴールデンカムイ トゥラノ アプカシアン―杉元佐一とアシリパが旅する世界―」と題した特別展が始まった。20世紀初頭の北海道・樺太(サハリン)を舞台にした人気漫画「ゴールデンカムイ」に登場するアイヌ民族の衣装や民具といった資料を原画と共に展示。当時のアイヌ民族の暮らしや文化、和人との関係性を紹介している。会期は8月22日まで。
野田サトルさん作の「ゴールデンカムイ」は、明治末期のアイヌ民族や和人の暮らし、時代背景などを丁寧に描いた作品で、アイヌ文化研究者からも高い評価を受けている。展示は、▽北海道と砂金▽ゴールデンカムイの登場人物▽コタンでの出会い▽日露戦争と北海道アイヌ▽樺太での出会い▽北海道の街―の6テーマで構成。作品に描かれた時代や文化について約200点の資料と原画で紹介しながら、主人公・杉元佐一とアシリパの2人が旅した世界を追体験できるようにした。
「北海道と砂金」では、世界各地のゴールドラッシュ(金の採掘ブーム)にあやかり、北海道でも行われた砂金掘りの道具カチャやユリイタを展示。「ゴールデンカムイの登場人物」では、アシリパの着物のモデルとなった草皮衣をはじめ、軍服や軍帽、マキリ(小刀)、看守制服など登場人物らの服装、装備品の資料を並べた。
日露戦争のコーナーでは、アイヌの男性63人が従軍するなど、戦争と北海道アイヌの関わりについて紹介。戦争で樺太に日本とロシアの国境が敷かれ、ニヴフやウイルタの居住地が分断されるなど、時代に翻弄(ほんろう)された先住民族に関するコーナーも設けた。また、「北海道の街」では、漫画に描かれた明治末期の和人の生活道具などを展示した。
会場では1930年代に樺太アイヌが着た貴重な草皮衣や、伝統的家屋チセの内部をイメージした展示なども目を引く。同博物館は「20世紀初頭のアイヌと和人の関係史を軸に、先住民族アイヌの歴史と文化に触れていただきたい」としている。
関連イベントとして23日午後1時半から、ゴールデンカムイのアイヌ語監修者で千葉大学名誉教授を務める中川裕氏の講演会を開く。事前の申し込みが必要で、同博物館ウェブサイトで応募を受け付けている。
特別展の観覧料は大人300円、高校生200円、中学生以下は無料。ウポポイ入場はオンラインによる事前予約が必要で、特別展観覧チケットは入場当日に博物館内で購入する。
▼「ゴールデンカムイ」とは
2014年から「週刊ヤングジャンプ」(集英社)で連載する漫画で、明治末期の北海道・樺太が舞台。元陸軍兵の杉元佐一とアイヌの少女アシリパが共に旅をしながら、アイヌから奪われた金塊の在りかと謎に迫る物語で、世界各国で翻訳されている。