観察頻度が減った鳥、増えた鳥 いつかまた見たいシマアオジ

  • レンジャー通信, 特集
  • 2021年7月2日
いつかまたサンクチュアリで見たい草原の鳥、シマアオジ。パネル展は11月まで

  ウトナイ湖サンクチュアリは、日本野鳥の会が1981年に野鳥の生息地保全のため開設し、今年で40年がたちました。周年事業の一環として、ネイチャーセンターでは、これまで取り組んできた自然保護の活動を紹介するパネルを特別展示しています。そこで今回は、約40年の野鳥観察記録をもとに、観察頻度が減った鳥と増えた鳥についてご紹介します。

   まず減少した鳥の代表は、シマアオジです。かつては北海道を象徴する草原性の夏鳥で、80年代初頭、当サンクチュアリでは「どこにでもいる普通の鳥」でした。ところが96年ごろから観察頻度が激減し、2015年に1回記録されたのを最後に確認できていません。

   逆に観察頻度が増加した鳥の代表はキバシリです。漢字では「木走」と書き、木の幹をぐるりと回って食べ物を探す森林性の留鳥です。今でこそいわゆる普通種で、冬の時期は特によく見られますが、1980年~90年代は1年に数回観察記録がある程度でした。

   これらの鳥類の観察頻度の増減は、サンクチュアリの自然環境の変化が関係していると考えられます。約40年の間に乾燥化が進み、ウトナイ湖周辺は草原から森林へと遷移しました。そのためシマアオジなど草原性の鳥は姿を消し、代わって森林性のキバシリが好む環境となり、観察頻度が高くなったというわけです。もっともシマアオジの減少理由の一つは、越冬地の中国南部で密猟されたことが挙げられ、日本だけでなく世界的に絶滅が心配されています。

   サンクチュアリが開設された当時を知る来館者は、「うっそうとした森になった」とか「昔は木に視界が遮られず、もっと遠くの風景も眺めることができた」ことなどを教えてくれます。この先ウトナイ湖の自然環境は、どのように変わっていくのか、私たちはどうしたら野鳥や生き物がすみやすい環境を守っていけるのか、パネル展がそんなことを考えるきっかけになり、皆さんとウトナイ湖の未来についてお話しできればと思います。

  (日本野鳥の会ウトナイ湖サンクチュアリ・善浪めぐみレンジャー)

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