JR苫小牧駅南口の旧商業施設「駅前プラザエガオ」の閉鎖から7年近くたち、衰退が止まらない苫小牧市中心部。都市計画が専門の北海道大学大学院工学研究院の森傑(すぐる)教授(47)に苫小牧の地域性を踏まえつつ、駅前再開発を前に進めるためのポイントを聞いた。
元は民間施設だった旧エガオをめぐり、市は廃虚化を防ぐ公共的な目的で複雑な権利関係の集約に動いたが、唯一残る権利者との交渉が難航。訴訟に発展し、駅前の再開発は全く進んでいない。森教授は「地方都市ではよくある話だ」と指摘し、個人的な見解と断った上で「経済成長期にそれなりに潤っていたことを知る権利者が多く、淡い期待もあり、損をしたくないとの思いになりがち」と分析する。行き詰まった交渉を動かすには「権利を持つ人にとってプラスになることが見えるか、どうか。そこに信頼性があるのかも大事だ」と強調する。
市は今年に入り、「都市再生コンセプトプラン」と銘打ち、エガオ跡地に中核となる複合ビルを建設し、緑で周囲を包む駅前再生のイメージ図を公表。「ウオーカブルな(歩きたくなる)まちづくり」を目指し、市民に活発な議論を促すことで、問題解決につなげる戦略を描く。
しかし、森教授は「市民を巻き込むにしても、市がどれだけ本気で、覚悟を持っているかを示さなければ駄目だ」とくぎを刺す。仮に権利集約が実現して民間事業者に再開発を任せる場合でも、「行政は自分たちの訴える方向性に責任を持ち、発言すること。お互いに腰が引けていると何だかよく分からない形の開発になってしまう」と警鐘を鳴らした。
また再開発を考える際、「栄えていたかつてをもう一度、というビジョンはまずい」と断言する。「ある時代にドンピシャでもうけたシステムも、時代が変われば逆転することが当然ある」と説明し、駅前自体が地方都市にとってかつてほど商業的なポテンシャルを持った場所ではなくなりつつある現状にも言及した。
森教授は2015年から3年ほど、市民ホール(仮称)に関する構想や計画の策定作業に携わり、苫小牧に何度も足を運んだ経験がある。「車線の多さに驚いた」といい、「市民の移動は車が中心。ウオーカブルなまちを目指すといっても、(車を)すべて捨てて鉄道などの公共交通に替えるのは非現実的だ」と指摘。「むしろ、細長い地形だからこそ次世代の移動手段をもっと考え、経済的にも環境的にもエコなまちづくりを打ち出してはどうか」とアイデアを投げ掛けた。
(河村俊之)