新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言で、不要不急の外出自粛が求められていることから、釣り倶楽部は今週も釣り場情報を控えての紙面作り。この機会に、次第に厳しくなっている釣りの規制や制限と釣り人のマナーを考える。
アウトドアブーム
太平洋に面し、砂浜や港、護岸で釣りを楽しめる立地条件から海釣りが盛んな苫小牧地方。アウトドアがブームの近年は、ピクニックやキャンプを兼ねたレジャーとして人気を集めている。
加えて釣りのスタイルが多様化し、女性ファンが増えるなど裾野は広がる。釣り方も虫や魚貝を餌にした伝統的な釣り以外にルアー(疑似餌)、ワームと呼ばれるソフトルアーでスタイリッシュかつ機動的に楽しむ釣りが普及し、ファン層の拡大を後押ししている。
市内では苫小牧港・西港と東港が人気の釣り場だ。休日ともなると西港のキラキラ公園や入船公園、貨物船が着岸していない公共埠頭(ふとう)では釣りを楽しむ姿がよく見られる。時期や場所によっては空きスペースがないほど釣り人とさおが並ぶ。
強化される規制
ただし東西港とも企業の専用岸壁は言うまでもなく、公共岸壁も港湾関係者以外の立ち入りは本来、禁止だ。区域内の荷さばき地、倉庫などには輸移出入の物資、周辺には運搬車両や荷役機械が保管、仮り置きされており、保安と安全上の問題がある。至る所に立ち入り禁止の看板が設置されている。岸壁が開放状態にあって釣り人が多数いても港湾管理者が許可しているわけではない。
外国船が着岸する埠頭はすでに徹底しており、テロ対策の国際条約に基づいて一帯をフェンスで仕切っている。荷役や各種作業中は保安要員が配置され、厳しく規制される。
トラブルの回避を
しかし、苫小牧港管理組合や釣具店などによると、釣り人と荷役業者、船社代理店など港湾関係者とのトラブルは絶えない。船の着岸や荷役の支障になり、危険なために場所の移動を求めた港湾業者に釣り人が暴言を吐いたり、罵倒したり。東港では釣り人同士のけんかが警察沙汰になり、岸壁への立ち入り規制の強化が促されたエリアもある。
近隣の港や漁港では漁船や施設の汚損、係留ロープの破損など悪質な行為も後を絶たず、漁業協同組合が釣り人の立ち入りに目を光らせている漁港もある。サケの人気釣り場がある宗谷管内枝幸町は昨年、町外の釣り人に釣りの自粛を求め、愛好者に衝撃を与えた。
北日本を代表する物流港を抱える苫小牧。市民が釣りを含めて水辺で憩い、港に親しみを持つ機会や環境を減らすことのないよう、市民と行政が協働してマナーの向上に努めたい。