6 高齢者憩いの場再び休止 ワクチンに期待も「楽観できない」

  • 3度目の緊急事態宣言 コロナ感染急拡大, 特集
  • 2021年5月22日
入所者との面会制限を告げる貼り紙。昨年2月以降、ずっと掲げられたままだ=グループホーム柏木

  新型コロナウイルス感染拡大が、高齢者の生活にも影響を与えている。苫小牧市内の「ふれあいサロン」は中止を余儀なくされ、高齢者施設は外部との交流を避けるなど、高齢者がいきいきと過ごすための活動が制限されている。市内で高齢者の一般接種が進む中、事態の好転を願う声が広がっている。

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   誰もが安心して暮らし続けられる地域づくりを目的とした、住民の憩いと交流の場「ふれあいサロン」。市内には町内会や老人クラブなどが主催するサロン約70カ所があるが、コロナ感染の急拡大を受け、サロンを開けなくなっている。

   昨年2月の道独自の緊急事態宣言以降、サロン開催を見送ってきた宮の森町内会は今年4月、活動をようやく再開。約20人が久しぶりに楽しい時間を過ごしていたが、わずか2カ月足らずで再び休止に追い込まれた。文化厚生部の部長、北口美智子さん(62)は「昨年中止を決めたときよりも残念だし、悔しい」と肩を落とす。

   毎月1回、旭町総合福祉会館でふれあいサロンを開いてきた旭町町内会・女性部部長の小山和子さん(81)も活動の停滞を悲しむ。「たとえ月に1回、短時間の交流であっても、高齢者にとっては生きがいのようなもの。仕方がないと分かっているが、本当に寂しい」とため息をつく。

   高齢者が自宅に閉じこもりがちになることで、懸念されるのは健康状態の悪化だ。市内のある地域包括支援センターによると、昨年以降、在宅の高齢者から骨折に関する相談が目立つという。外出自粛によって歩行時間が減り、筋力や骨が弱っていることが原因とみられ、中には日常生活を送る中で自然に骨折したケースも。担当者は「コロナ禍の陰で介護を必要とする人が地域内に増えているのでは」と危機感を強める。

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   高齢者が入所する介護施設では昨年2月以降、家族や住民ボランティアを含め外部の人間の立ち入りを規制している。特別養護老人ホームなど複数の施設を運営する市内の社会福祉法人も施設内の直接面会を制限。外部の人を招く行事もできず、1年以上が経過した。法人関係者は「外からウイルスを持ち込まないことに全力を注いでいる」と話し、今後はワクチン接種の効果に期待する。

   グループホーム柏木(柏木町)も1年以上、家族と入所者の面会を制限している。入所者に荷物を届けに来た家族が玄関先で顔を見られる配慮をした時期もあったが、今回の宣言を受けて玄関への立ち入りさえも禁止した。担当者は「ワクチン接種が進めば面会できるようになる、と希望を抱いてみんなで頑張ってきた」と力を込める。だがワクチン接種が始まっても、感染拡大が収まる気配はない。「楽観視はできない」と痛感している。

  (終わり)

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