「これ以上の増床は通常医療とのバランスが非常に厳しい」―。東胆振唯一の感染症指定医療機関、苫小牧市立病院の担当者は危機感を募らせる。新型コロナウイルス感染が全道で急拡大し、道は医療態勢の崩壊を防ぐべく、15日に「医療非常事態宣言」を発出。市立病院も道の要請に基づき、感染症病床の増床を続けている。
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市立病院は、入院などが必要な救急患者を24時間体制で受け入れる2次救急、赤ちゃんの出産前後の周産期医療などを担う、東胆振および日高医療圏の中核病院。2020年1月末に道内で感染者が初確認されると、同院でも感染が疑わしい患者を診察、検査する専用室を院内に設けた。
当初は感染症病床4床で対応していたが、2月下旬には胆振管内でも感染を初確認。市立病院でも患者の受け入れが始まり、疑似症例の入院患者も増えたため、一般病棟1棟(48床)を新型コロナ専用病棟に変えた。4月には千歳市でクラスター(感染者集団)が発生し、同病院も管外の患者を受け入れた。道からも増床の依頼があり、専用病床を12床に増やした。
ただ、感染症病床は増床に伴って、医療人材を多く確保する必要性がある。同病院もマンパワーを確保するため、当初は2病棟を休止して対応したほど。昨年12月に胆振管内でコロナ感染が急拡大したが、市立病院から感染者が出たため、増床の要請が見送られた経緯もあるが、市立病院に寄せられる期待は大きい。
道などによると、増床は3次医療圏の札幌市の状況が要因の一つだが、胆振管内も刻一刻と厳しさを増している。管内の民間医療機関でも感染者を受け入れた他、他圏域の医療機関や療養施設への搬送、入所調整中の自宅待機が増えるなど、道内で厳しいベッドコントロールが続く。
今年4月に道内で感染が再拡大し、道は市立病院にさらなる増床を要請。4月30日に感染症病床を16床に増やし、さらに今月17日に1病棟を休止して20床に、あす21日に24床まで増床する。通常医療を堅持しながらも、段階的にコロナ対応を強化しているが、環境は厳しさを増している。
20日の定例記者会見で、市立病院の佐々木薫事務部長は「病院自体が非常事態」と強調。相次ぐ増床により病床に空きはあるというが、「余裕はない」と言い切る。一般病棟もほぼ満床になる中、マンパワーをコロナ対策に向けており「若くして重症になる方もいてマンパワーを消費している」と説明する。
さらに感染の急拡大に伴って、入院加療の在り方も変わり、「感染拡大前は高齢者やハイリスクな方は入院していたが、現在入院の多くは一時的に酸素吸入が必要になるような中等症以上」と明かす。看護度の高い患者を受け入れつつ、地域の中核病院としての責任を果たす、ぎりぎりの調整が続いている。