緊急事態宣言の発令により、道が「特定措置区域」以外の全道飲食店に対しても、営業時間を午前5時~午後8時、酒類提供を午前11時~午後7時とするよう要請し、苫小牧市内の各店で対策に追われた。道が求める18日までに多くの店舗が時短に対応し、休業を決断する店舗も目立つ。昨年2月の道独自の緊急事態宣言以降、客足の減少など影響を受け続けている飲食業は悲鳴を上げている。
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「時短か休業か考えたが、ホテル利用者など必要としている人がいる」。居酒屋海賊亭(錦町)の五十嵐勝美店主(78)は複雑な胸中を明かす。緊急事態宣言を受けて16日から、道の要請に応じて営業時間と酒類提供時間を短縮。歓楽街である錦町や大町の人出がさらに少なくなった場合、休業も検討するという。
店は今年に入り、客数が前年を若干上回るようになっていたが、3、4月の歓送迎会シーズンの宴会利用はゼロ。売り上げはコロナ禍前に比べて4割ほど下がっており、五十嵐店主は「17日も歩く人が少なかった。酒類の提供が午後7時までだと厳しい」と話す。
居酒屋などを経営する中善(表町)は宣言期間中の16~31日、刺身居酒屋のなか善本店(表町)と焼き肉店の韓国酒膳わんじゃ(同)の営業時間を午後4時30分~同8時に短縮。刺身居酒屋なか善別邸(錦町)とゑびす鮮魚店(同)を休業すると決めた。
今年の売り上げは例年の5割ほどで、緊急事態宣言中はさらなる減少を見込む。同社の藤淳一代表(44)は「道の要請に応え、他の店と足並みをそろえて感染を食い止めたい」と強調する。
一方で「納品業者など、われわれよりもつらい思いをする人がいる」と頭を悩ませ、昼食時間帯のなか善本店のランチ、ラーメン店のらぁ麺いち華(表町)は通常営業を維持する。
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海鮮居酒屋苫の蔵(錦町)は16~31日を休業にした。営業時間は午後5~11時だが、最近は同7時から客が入り始め、9時くらいで帰る場合が多かったためだ。同店の松下文和代表(52)は「従業員の感染リスクも怖いので休業する。人出を減らし、2週間で収まってほしい」と願う。
北海道料理飲食業生活衛生同業組合苫小牧中央支部は、加盟店約80店が時短の要請に応じたり、休業したりと、感染拡大防止に努めるが、斉藤芳夫支部長(71)は「特定措置区域とそれ以外の地域で区分けがはっきりせず混乱がある」と指摘。組合員の相談に対応している。
自身が経営する大町のバー、ケントは16~31日に休業。胆振管内で感染が急拡大する中、斉藤支部長は「過去に飲食店でクラスターも発生した。会員も心配の声が多く、危機感は今の方が強い」と業界の気持ちを代弁した。