「残念だが、この状況では仕方がない」―。7月30日~8月1日の日程で開催予定だった苫小牧の夏の一大イベント「第66回とまこまい港まつり」。17日に市職員会館で開かれた臨時の実行委員会で、新型コロナウイルスの感染者が急拡大している現状を踏まえ、今年も開催中止が決まった。異論は出なかった。
昨年、前身の「観光まつり」が1950年に始まって以来、初めての中止となった。今年はなんとしても実現させたいと、早くから感染対策の検討を重ねてきた。主会場の中央公園(若草町)は▽通路や店舗区画の間隔を広げる▽開催時間を短縮する▽出入り口を6カ所に限定し、体温測定で37・5度以上だとアラームで知らせるカメラを導入する―など、入念に準備を進めていた。
しかし、4月下旬から道内の感染者が急激に増え始めた。感染力が強いとされる変異株への置き換わりが進み、若者にも感染が広がっていた。事務局の市観光振興課は、飲酒を伴うビアガーデンは厳しいと判断。オンライン開催の可能性も探ったが、「集まって踊ったり、食べたり、飲んだりするのを楽しむのが港まつり。オンラインで本当に喜んでもらえるのか」と苦悩した。
「開催する場合には、皆さんに楽しんでいただく環境が前提となる。感染状況が不透明な状況ではやむを得なかった」。2年連続中止の理由を岩倉博文市長はこう語った。
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樽前山神社で例年7月14~16日に行われる例大祭も昨年同様、境内での露店やステージの催しは中止する。神事は人数を制限し、みこし渡御は規模を縮小して行う。港まつりに合わせて7月31日と8月1日に開催予定だった市公式キャラクターとまチョップの生誕10周年事業も延期する。道内外から20体以上のキャラクターを招待する計画だった。
地域での夏の行事も判断の時期が近づいている。昨年度は港まつりの中止決定後、軒並み見送りの動きが広がった。市町内会連合会の谷岡裕司会長は「今年は変異株の増加で今までと違うリスクがある」とする一方で、12日から始まった高齢者のワクチン接種に期待をかけ、「地域の行事ができる可能性はある」とみる。
苫小牧観光協会の市町峰行会長も「7月末では若者へのワクチン接種は進んでいないと思うので、港まつりは苦渋の判断だったろう」とおもんぱかる。同協会が実行委の事務局を担っている樽前地区での「たるまえサンフェスティバル」は昨年9月、感染対策を徹底した上で敢行した。市町会長は「今年も9月にできれば実現したい。カギを握るのはワクチンだ」と明言し、「接種を迅速に進めてほしい」と力を込めた。