平取町でアイヌ文化発祥の地と称される「二風谷コタン」。沙流川流域の豊かな自然に育まれたアイヌ文化を伝承する一大集落だ。町立の二風谷アイヌ文化博物館、萱野茂二風谷アイヌ資料館をはじめ、アイヌ文化の発信施設が徒歩圏内に並ぶ。刺しゅうや木彫などアイヌ工芸に触れられる施設や土産店も多い。
博物館前は象徴的な存在のチセ(家)9棟が林立し、プ(倉庫)など付属施設やチプ(丸木舟)と共に「屋外展示」されている。伝統的なかやぶきの建築法を引き継ぐため、毎年のように新築や改築工事を展開。春を迎えたこの時期は日々、周りの木が茂り、芝生も青さを増し、アイヌ文化の学びへの意欲を自然とかき立ててくれる。
博物館はアイヌ資料約4000点を収蔵し、うち約1000点を常設で展示。アイヌ民族の暮らしが伝わるよう住居や食事、仕事、育児など分野ごとに並べた。アットゥシ(織物)は技術や知識を受け継いだ様子の解説に力を入れ、チプは触ることができるなど展示方法も工夫。チセを模したビデオステージでは、ウエペケレ(昔話)などの伝承作品も鑑賞できる。
このほど音声解説システムも導入し、新型コロナウイルス感染対策に力を入れつつ、地域の語り部による口承文芸などを積極的に発信する予定。マスク着用など対策への協力は不可欠だが、長田佳宏館長(49)は「地域に密着したアイヌ文化にぜひ触れて学んでほしい」と呼び掛けている。