「新型コロナウイルスの感染対策のため、約10分間の換気を行います」―。苫小牧市日新町の公共スポーツ施設、アブロス日新温水プールで2時間ごとに流れる館内アナウンスを合図に、当番職員が窓を一定時間開ける。消毒液と雑巾を手にし定期的に館内巡回も行う。コロナ禍以前にはなかった作業だ。
プールやトレーニング室、全長114メートルのウオーキングデッキ、多目的スタジオなどがそろう同施設は、都市総合開発が指定管理を担い日々の運営に当たる。ここ数年は18万人前後の利用があり、市のモニタリングでAA(極めて優れている)評価を受ける同施設も、コロナ禍の昨年度は約11万人と客足が大きく遠のいた。津谷敬太館長(35)は「利用者の危機意識の高さを感じた」と話す。
市民が安心、安全に健康増進を図れるよう感染症対策には余念がない。換気扇で常時空気が入れ換わるプール以外の場所は、職員が定期的に窓を開けるなどして対応している。ロッカーなどの消毒作業も1日に3回行い、出勤者の半数以上を割いて取っ手や鍵を1カ所ずつ丁寧に消毒する。「感染対策で仕事量は倍になった」と津谷館長は話すが、「利用者さんからの感謝の言葉が励みになっている」と笑顔を見せる。
地域の子どもたちが多く通うプール教室では密集を避けるため、準備体操を分散して実施する。密室になりやすいロッカー室の滞在時間を減らすため、受講者にはあらかじめ水着を身に付けた状態で来館するよう促す。講師は、口元に塩化ビニール製の水泳用マスクを装着し指導中の飛沫(ひまつ)を防ぐ。
コロナ禍の施設運営は今年度も続く。「そこまでやるかと言われるくらい、徹底した対策が利用者の信用につながる」と津谷館長。「今後も妥協せずに取り組んでいきたい」と覚悟をにじませた。
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他施設の指定管理者も感染対策を講じて市民スポーツを支える。
緑豊建設は主に市緑ケ丘公園内にある屋外施設を運営している。特に徹底しているのは入場者の把握。とましんスタジアムは最大3566人を収容することもあり、競技者だけではなく観客の連絡先を掌握して感染者が出た場合に備える。矢野孝一統括は「陽性者の行動経路を追跡できるような体制を整えている」と話す。
白鳥王子アイスアリーナ=苫小牧=など市内二つのスケートリンクを運営する苫小牧市スポーツ協会は昨年、感染症の影響で自主事業の半分近くを中止した。人気のスケートエンジョイスクールなどは参加定員を減らして何とか開催にこぎ着けたが、「赤字の事業もあった」と小金澤周平事務局次長は明かす。「今年度は単に中止するのではなく、感染症対策を徹底した上で開催の方向に持っていけるようにしたい」と語り、協会として市民がスポーツを楽しみ、親しむ機会の確保に努める考えだ。