苫小牧30代男性 変わる周囲の視線、知人と食事で濃厚接触者、施設療養後味覚障害

  • 新型コロナ感染者に聞く, 特集
  • 2021年4月26日

  「あの日、食事に行かなければ」―。苫小牧市の30代男性は後悔している。市内の居酒屋で知人3人と食事をし、新型コロナウイルスに感染した。陽性判明後は無症状が続いたが、ホテル療養を終えてから後遺症に悩まされた。感染したことで身近だった人からも距離を置かれ、周囲の人たちの自分を見る目が変わっていくのをまざまざと感じた。

   男性が居酒屋を訪れた2日後、一緒に食事をした知人1人の感染が判明。男性にも「濃厚接触者に該当する」と保健所から連絡があった。すぐに自家用車で保健所に向かい、乗車したまま検査を受けた。

   翌日、電話で陽性だったと通知があった。胆振管内で感染者が断続的に発生していた時期ではあったが、まさか自分が―と、どこか人ごとのように捉えていた。後に男性の濃厚接触者からも、陽性者が出た。

   陽性判明から3日後、他に感染した男女8人とバスに同乗し、札幌市内のホテル療養施設へ向かった。ホテル生活は10日間ほど。滞在中は無症状で、仕事の電話をしたり、テレビを見たりして過ごした。

   部屋を出られないこと以外、普段の生活とほとんど変わらなかったが窮屈感が強く「早く帰りたい」という思いだけが募った。ホテル生活を終え、電車で苫小牧に戻り、駅を出た時にはほっと胸をなで下ろした。

   帰宅してから3日後、男性は急に異変を覚えた。食事の際、味覚を感じなくなった。「おかしい」と砂糖をなめてみたが、甘さを感じない。不安に思った男性は市内の耳鼻科を受診した。

   医師にはコロナの後遺症と診断され、「味覚が戻るまでの期間には個人差がある」と伝えられた。同様の悩みを抱えて来院する人が多いこともこの時に知った。病院からは亜鉛のサプリを処方された。

   男性は1人暮らし。料理をしないため、食事は基本外食で「味はしないが空腹にはなる」と、無味な食べ物を口に運ぶ日々が続いた。1カ月ほどたったある日、炭酸水のように感じていたビールを口にするとかすかに味がした。この日から徐々に味覚が戻り、現在は感染前の状態まで回復した。

   ただ、日常生活での障害は味覚にとどまらなかった。周囲が自分に向ける視線の変化を感じた。「言葉にしなくとも、雰囲気で相手が避けていることが分かった。ばい菌扱いされているようにも感じた」と振り返る。

   周囲で「(男性は)治癒していない」といったうわさまで立ち、外食先で感染したことを知る知人に「懲りていないのか」と白い目で見られたこともあった。男性は「感染したのは事実」と気にしないよう努めた。

   今回の体験を振り返り、「いつ、どこで感染するか分からない」と強調。「人それぞれ事情はあると思うが、マスク着用や手洗いなど最低限のことを徹底し、感染に気を付けながら生活をするしかない」と訴えた。

  (随時掲載)

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