機械や道具が進歩していく。しかし変化が早過ぎないか。例えば音楽。音源も再生装置も、この半世紀ほどの間に、ずいぶん変わった。
重たいレコードや蓄音機は見たことがある程度。自分は、軽いプラスチックのドーナツ盤のレコードを、小型の音質の良くないプレーヤーで聞いた世代。働き始めたのはオーディオブームの時代。狭いアパートに巨大なスピーカーを何組も置いて聞き比べた。その頃にはやり始めた音源がカセットテープ。音質はまだ良くなかったが、録音や保管、持ち運びの便利さには驚いた。今はコンパクトディスクの時代か。コンピューター用の記憶媒体も使えるようだが仕組みが理解できず手が出ない。
先月、オランダのルー・オッテンスさんが亡くなり新聞に小さな死亡記事が載った。カセットテープの発明者だという。テープはどこかにあるはず。弔いをと思ったものの、再生装置はどこに置いたか。納戸ではスピーカーやレコード、カセットテープが、二度と歌うことなく、捨てられる日を待っている。
最近の心配は写真のデータ。焼き付けた写真は、見れば保存や破棄の区別が付く。しかし、家人のスマートフォンや薄型のコンピューターに届く、孫たちの写真や動画のデータは、機械の寿命が尽きた時や持ち主の体調不良の時に、どのように扱うべきなのか。機械の操作どころか電源のスイッチがどれかも覚えるのが大変。便利と快適の残骸が身辺に次々とたまる。(水)