2021年度が始まった。官公庁や企業、学校などでこの春、新たなスタートを切る人も多いと思う。真新しいスーツや制服に身を包み、どこか緊張感を漂わせながらも、希望に満ちた姿を見ると、自然とやる気のお裾分けを頂いた気分になる。
自身の新人時代を振り返ると、名刺交換がどうにも苦手だった。社会人1年生らしく、ビジネスマナーを学んで臨んだものの、意識しすぎるあまり、動作はぎこちなくなるばかり。いつしかカメラやノートで手がふさがりがちなことをいいことに、受け渡しを「片手ですみません」などと簡略化するようになったが、あいさつを大事にする初心は忘れずにいるつもりだ。
ところがその名刺が最近、明らかに減らなくなった。書くまでもなく新型コロナウイルス感染拡大の影響だ。対面の取材がこの1年間で少なくなり、新たな接点が生まれづらくなった。「密」に雑談することも減り、飲み会の誘いもなくなった。代わりに電話で取材する機会が増え、オンライン会議などを写真に収めるという、どことなく珍妙な取材も多くなった。
コミュニケーションの希薄化を嘆いているが、取材活動だけではなく、いろんな場面で変化が求められている。取材先で「ピンチをチャンスに」という趣旨の言葉もよく聞く。コロナ下で迎える2度目の春、体当たりで挑戦する新人のように、未知の出来事と向き合っていきたい。(金)