新型コロナウイルスの猛威は多くの高校生が目標とする全国総合体育大会(インターハイ)を中止に追い込んだ。苫小牧総合経済高バドミントン部で主将を務めた永沼叶希=ながぬま・かなき=(18)はインターハイ苫小牧地区予選中止が決まり、昨年7月で引退した。今は「3年間やってきたことは無駄にはならない」と思っている。4月には札幌市の短期大学に入学して保育士を目指す。
昨年は4月から部活動自粛期間が始まった。6月に活動再開とはなったが、声を出してはいけない練習になり、例年とは雰囲気が大きく異なる状況下でトレーニングせざるを得なかった。
2年時に出場した苫小牧地区の冬季大会では単複両方で初のベスト8入りを果たした。練習で培ってきたレシーブに大きな手応えを感じたそうで「足を止めないでショットに食らい付く粘り強さが身に付いた」。
今年度は地区予選ベスト4以上の成績を目指すはずだったが中止決定の報を受け止めた。「最後の大会が中止されて寂しい思いはあったけど、最後まで後輩と楽しみながら部活動できたのはいい思い出になった」と踏まえることにした。
代替大会の開催に望みを託しつつ練習に打ち込んだ。「大会が開かれたときに力を出せなくなるのは嫌だった」。しかし、それもかなわずに引退。コロナ禍という試練の中の部活動で得たものは大きかった。「コロナで寂しい思いをしたことや部活動で厳しい指導を受けたことで、今後の人生で経験する壁を乗り越えていけると思う」と語った。
4月からは短大に入学し、保育士になる目標を持っている。バドミントンというスポーツ経験を元手に「体を動かす楽しさも伝えられる保育士になりたい」と話す。
「一見シンプルに見えるけれど、手足の先まで注意を払わないと羽の軌道がずれてしまう」と競技の奥深さを語る。錦岡小の児童だった頃、テレビで見たプロの試合で、シャトルがはじけるような打音が心地よく耳に響いた。それから6年時に苫小牧市内のクラブチームに入門。緑陵中を経て高校まで約7年間握ってきたラケットを短大進学後いったん置くつもりだ。3年間の部活動を終え、「シャトルの音はテレビで聞いた音に少しは近づいたかなと思う」。
(おわり)
連載は石井翔太、北畠授が担当しました。