この時期、自治体の新年度予算が決まることもあって新規の事業がよく報じられる。目玉の事業、施策は課題解決への道筋の具現化でもある。何を重視し注力するかで首長や役所の本気度が分かる。
その点で注目しているのは北海道の秋サケ資源対策だ。ふ化事業のサケの稚魚にDHA(ドコサヘキサエン酸)などを加えた餌を与えて遊泳力を強化するという。予算を増額し、本格的な展開へ歩みを進める。
早くから北大、岩手大、道のさけます・内水面水産試験場が研究を進めていた。DHA、EPA(エイコサペンタエン酸)などを配合した餌を与えてサケ・マスの稚魚を飼育することで、遊泳力、体力を強化できることが分かっている。特定の指標ではカラフトマスが顕著だ。研究は継続して進められている。強化されたサケ、サクラマスの稚魚が親魚となって回帰率の向上につながることが期待される。既にサクラマスでは餌で強化した魚群の回帰率が自然産卵、ふ化の魚群より優れていることが分かっており、サケでも同様の効果に期待が膨らむ。
道のサケ来遊数はこの十数年で3分の1に激減した。胆振各漁協の水揚げも記録的な不漁だ。気候や海象、生態系など要因は複合的に作用している可能性もあり、不漁のメカニズムを特定することは難しい。せめて可能性のある取り組みを進めて状況の改善につなげたい。水産は本道の重要産業。将来につながる施策の拡大を期待する。(司)