最終学年のシーズンを迎えた駒大苫小牧高スピードスケート部の尾谷琴音=おたに・ことね=(18)は競技を続けるか否か、揺らぐ心を昨年10月に帯広市で行われた合宿中に氷上で確かめた。「まだやり切れていない」―。継続する気持ちを強くし、山梨学院大への進学を決意した。「勉強も頑張りながらレースでもいい結果を残したい」と学生選手としての飛躍を誓う。
小学2年から地元の厚真町の少年団でスピードスケートを始めた。当初から長距離を専門としてきたが、高校2年時の2019年に短距離に転向した。「もともと好きだった」というスプリント種目は「短いぶんスタート一発で決まる緊張感が自分に合っていた」。
ところが、シーズン中はへんとう炎を発症して体調を崩した影響で本調子が出なかった。満を持した3年のスタート時には新型コロナの感染拡大で部活動自粛を強いられ、もどかしい日々を過ごした。「学校に行けない期間のトレーニングは追い込みをかけるのが難しかった」と苦悶(くもん)の日々を振り返った。
1月に長野県で開かれた全国高校総合体育大会(インターハイ)では女子500メートルに出場。いつも以上にレースへの意気込みは大きかった。同じくスピードスケートに打ち込む弟の駿文(厚真中3年)が出場予定だった今年の全国中学校体育大会はコロナ禍で中止された。「弟の分も頑張ろう」と滑ったレースは42秒13で21位。高校最後のレースを振り返り「その時点での実力はしっかり出せた」とすがすがしい表情で語った。
3年生は尾谷のほかに、主将を務めた清水彩花と大野珠梨の女子2人がいて互いに鍛えてきた。「3年間仲良く練習してこれた」と回顧。「大会の日には声を掛け合って臨むことができた」。信頼する仲間と一緒に好タイムを目指した日々を振り返った。
バンクーバー五輪女子パシュートで銀メダルを獲得するなど競技者としての第一線で活躍し、現在も現役選手としてレースに出場し続けている田畑真紀監督(46)からの指導は特別なものだった。リンクで背中を追いながら滑る機会も多く、「自分のフォームの細かい変化などその都度指摘してくれて、課題が見つかった時には一緒になって考えてくれた」と感謝する。
新年度は学生スプリンターとしてさらなる高みを目指す。目指すのはジャパンカップ出場。「まずは出場権を取ることが目標。レースでは常に自己ベストの壁を乗り越えることを意識していきたい」と抱負を語った。