先日、2020年度最後の小学校への出前授業が無事に終了しました。20年度は新型コロナウイルス感染対策で小中学校が長く休校措置を取っていたこともあり、出前授業が行えるかどうか気掛かりではありましたが、再び学校活動が始まると、ありがたいことに多くの学校から依頼をいただき、これまでで一番多い50回の授業を実施、約1500人の子どもたちに出会うことができました。
この出前授業では、ウトナイ湖野生鳥獣保護センターで保護され、自然復帰ができなくなった傷病鳥たちを、実際に見てもらうことを特徴としていますが、多くの授業で紹介しているフクロウ(フクロウ目フクロウ科)を見ると、かなりの確率で子どもたちがこんな言葉を口にします。
「フクロウって、首が一周するんでしょ」と。
確かに、フクロウが首をかしげたり、左右に素早く動かしたりする映像などを見ると、まるで首が一周しているかのようですが、実は「一周はしません」。
しかし、フクロウの首の可動域は左右に約270度といわれ、首を振るだけで、360度を視界に入れることができます。それを可能にしている一つが頸椎(けいつい)の数。あまり知られていないことですが、ごくわずかな例を除き哺乳類の頸椎が7個と一定なのに対し、鳥類では種によって、13~25個。私たちの2~3倍も首の骨の数が多く、このことが鳥類の首のしなやかな動きを可能にしています。
では、なぜ鳥類の中でもフクロウだけがよく首を回す印象があるのでしょうか。それにはフクロウの目の大きさと位置が関係しています。夜行性であるフクロウは、暗闇でもよりたくさんの光を吸収するために大きな目を持ちます。そして、その大きな目は特殊な骨(強膜輪)でしっかり固定されており、私たちのように目だけをキョロキョロと動かすことができません。さらには、狙った獲物の距離や動きを正確に捉えるために両目はほぼ真正面を向くため、視野は前方向に限られているので、結果として、フクロウが周囲を確認するには、とにかく顔ごと回すしかないのです。
古来より人々に親しまれ、子どもたちにも人気のフクロウ。首を回すという、時としてかわいらしくもあるその特徴的なしぐさには、フクロウの生態がゆえに進化した、体のつくりに秘密があったのです。
(ウトナイ湖野生鳥獣保護センター・山田智子獣医師)