国内では東日本大震災の発生前から、被災地の生活再建にはボランティアの力が重要との認識が広がっていた。苫小牧市も2007年、災害時に全国各地からのボランティアを受け入れる災害ボランティアセンター(災害ボラセン)を開設することを、地域防災計画に盛り込んだ。
しかし、同計画では災害ボラセンの設置・運営機関や、ボランティアの受け入れ方法があいまいだった。市と市社会福祉協議会は震災を契機に、11年9月に災害ボラセンの設置・運営マニュアルを策定。市社協を設置・運営機関に定めた。
市社協はこれを受け、職員の災害対応行動マニュアルを整備した。12年3月には災害ボランティアを養成する市民向けの研修も実施。17年に設置・運営マニュアルを改訂。大地震や大津波を想定した初の災害ボラセン開設訓練も行った。
16年度には、災害ボラセンを地域で支える役目を担う「防災ボランティア」の養成と登録にも乗り出した。苫小牧で大規模災害が発生した際、被災者が求めている支援内容を把握して災害ボラセンに伝えたり、各地から集まる災害ボランティアを道案内したりと、災害ボラセンを側面から支援してもらう考えだ。
市社協の伊藤康博事務局長は「被災地復興のカギは地域のコミュニティー力にあることを痛感した」と震災を振り返り「日ごろから地域づくりに取り組む社協だからこそできる備えとして、特に防災ボランティアの養成に力を入れてきた」と説明する。
市社協は防災ボランティアの登録者を増やそうと毎年、防災に関する専門知識やボランティアの役割などを伝える登録研修会を開催。18年9月の胆振東部地震で市民の危機感が一気に高まったこともあり、登録者数は178人に増えた。
防災ボランティアの中でも特に専門知識を持ち、自分が住む地域にも精通している8人を、束ね役となる「防災リーダー」に任命。着実に地域の防災力を向上させている。
一方、コロナ禍で災害ボランティアの在り方も変化を余儀なくされている。感染拡大を防ぐ視点から、市外のボランティア受け入れを制限する可能性も浮上。従来はボランティアの申し込み手続きや待機、移動、活動などは集団を基本に考えていたが、これらも感染予防のため見直しが迫られている。
市社協は感染症対策を念頭に、設置・運営マニュアルの見直しも検討しており、桜井宏樹地域福祉課長は「何かあったら市外からたくさんの人が駆け付けて助けてくれる―と思い込むのは非常に危険」と指摘。「コロナ禍の今、万が一災害に見舞われたら自分や家族、地域をどう守ればいいかを真剣に考えるときに来ている」と力を込める。(姉歯百合子)
(終わり)