4 進む住宅整備、新たなにぎわい創出 コロナ禍で復興に足踏み 人口減少も課題 宮城県名取市・山元町

  • 特集, 被災地の今 東日本大震災10年
  • 2021年3月13日
平日の午後も人でにぎわう名取市の「かわまちてらす閖上」
平日の午後も人でにぎわう名取市の「かわまちてらす閖上」
山元町の「やまもと子どもも大人もみんなで遊び隊」が設置した黄色いハンカチ
山元町の「やまもと子どもも大人もみんなで遊び隊」が設置した黄色いハンカチ

  12日午前は宮城県名取市に入り、2011年、14年も訪れた閖上(ゆりあげ)地区を車で走行した。津波で住宅が流された地域は、約5メートルかさ上げされ、新しい住宅が並ぶ。かつて敷地内に入って取材した、津波被害を受けた閖上小学校は移転し、小中一貫校「閖上小中学校」になっていた。時の流れを感じた。

   東日本大震災後、毎年追悼イベントを開いている組織「なとり復興プロジェクト」の実行委員長で閖上出身の佐々木悠輔さん(39)と7年ぶりに再会した。今年も11日までに市内6カ所で灯籠を2000基並べ、犠牲者の冥福を祈った。

   佐々木さんは同市の現状について「漁港近くで朝市が行われ、新しい施設も完成し、週末に人が集まるようになった」などと解説してくれた。震災後は閖上地区などで区画整理が行われ、名取川沿いに商業施設「かわまちてらす閖上」や震災復興伝承館、災害公営住宅などが建設され、ハード面の復興が進んだ。

   一方、住民が震災を機に閖上から離れるケースもあったという。企業の進出も進んでいるが、昨年から新型コロナウイルス感染が拡大し、各業種で売り上げに影響を与えているようだ。

   同プロジェクトのイベントも回数を重ね、追悼に加えて伝承の役割を持つようになった。佐々木さんは「風化の防止、震災を伝える役割を持ち、やらなくてはいけない」と意気込む。

   同市の死者・行方不明者数は992人(総務省消防庁まとめ、3月1日時点)。

   同日午後は宮城県山元町を訪れた。7年前に取材した、幸せの黄色いハンカチプロジェクトに取り組む住民有志の団体「やまもと子どもも大人もみんなで遊び隊」の事務局の岩佐孝子さん(67)と、同隊隊長の吉田和子さん(60)に会った。

   同隊は2003年に発足し、行政と連携し、町内でイベントを定期的に開催。震災後、同町を訪れた全国のボランティアとつながりができ、毎年同プロジェクトで使う黄色いハンカチが送られてくる。

   同町の死者・行方不明者数は718人(同)。震災後は人口減少が加速した。震災前の10年は人口1万6704人だったが、今年2月末現在1万2067人まで減少。同町議会議員を務める岩佐さんは「沿岸部が切り捨てられ、復興の遅れから、若い人が出ていく」と指摘する。

   同隊は今後も町民に喜ばれる活動を続けるという。年々送られてくるハンカチの枚数が減るなど、震災の風化も懸念される中、吉田さんは「感謝の気持ちを伝えるため、できる限り続けたい」と前向きに語る。

   復興事業が進む中、新型コロナによる経済への悪影響、人口減少など被災地を取り巻く課題は、東胆振1市4町と共通する部分もある。被災地でまちづくりに携わる住民有志は熱い気持ちを持ち続け、愛するまちが良くなることを願っている。

 (室谷実)

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