7 山田秀三の『北海道の旅と地名』  古人の心に触れる

  • イコロ 資料に見る素材と技, 特集
  • 2021年3月13日
収蔵資料展で紹介している『北海道の旅と地名』の原稿や挿絵
収蔵資料展で紹介している『北海道の旅と地名』の原稿や挿絵
山田秀三の手による白老付近の挿絵。収蔵資料展では挿絵をスライド映像にして展示している
山田秀三の手による白老付近の挿絵。収蔵資料展では挿絵をスライド映像にして展示している

 『アイヌ語入門』は今でも座右に置いてある―。アイヌ語地名研究家の山田秀三(1899~1992年)は、『北海道の文化』(1961年)でそう記した。国立アイヌ民族博物館収蔵資料展「イコロ」のカンピ(紙)のコーナーでは、アイヌの言語学者・知里真志保(1909~61年)の『アイヌ語入門』などの原稿の隣に、山田の著作『北海道の旅と地名』の原稿を展示している。

 山田は、1951年に北海道曹達の社長として幌別町(現在の登別市)に工場を造った人であり、幌別出身の知里と共に幌別周辺のアイヌ語地名を調査するなど、この胆振の地にもゆかりが深い。

 本書は1970年に北海道文化財保護協会より刊行された文庫本で、函館付近から始まり、噴火湾周辺~室蘭~登別~白老~苫小牧~千歳~札幌まで、まるで旅をしているかのように地名をたどっていく。「アイヌ地名は全道にわたって、同形、類形のものが多い。諸地で同形地名を見ていると、頭の中に重ね写真のようなものができて、その地名を聞きさえすれば、自らそこの地形が浮かんでくる。そして、その名を付け、また使った古人の心に触れるような気がする」という冒頭部分でわくわくが止まらなくなる人も多いだろう。

 さて、この山田の原稿であるが、手作りの表紙を付けて種類ごとにとじて整理され、製版寸法に合わせて描かれた挿絵には何ページのどこに入れるかという詳細な指示が記される。研究は、文章だけでなく、研究そのものにも研究者の人間性がにじみ出るものだ。データの扱い方、研究への姿勢、結果に誠実で、客観的であるかということは、研究者がいかなる人なのか知ることでより鮮明になる。その研究への信頼につながることもあれば、どの点に注意して読むべきかという指標にもなり得る。

 山田の原稿から見える丁寧な仕事ぶりと、そこからにじみ出る人となりをぜひ感じてほしい。

 (国立アイヌ民族博物館・深澤美香研究員)

 ※白老町の国立アイヌ民族博物館が開催中の収蔵資料展「イコロ―資料にみる素材と技」(第2期は3月21日まで)をテーマにした本企画は、毎月第2・第4土曜日に掲載します。

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