2 自主防災組織 災害への備え次代に、「訓練、小規模でも定期的に」

  • 教訓を生かす 東日本大震災10年, 特集
  • 2021年3月12日
地域防災の基本「日常的な近所付き合い」を大切に訓練する市民ら

  苫小牧市内の自主防災組織(以下自主防)は、全国各地の大規模自然災害を教訓に構築、強化が進められてきた。1995年の阪神淡路大震災を契機に誕生し、2004年の新潟県中越地震など事有るごとに、地域住民が防災意識を高めてきた。11年3月の東日本大震災の影響はとりわけ顕著で、この10年間で地域の防災力は向上。一方で少子高齢化や人口減少が進み、担い手不足など課題も顕在化している。

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   震災以前の自主防は市内53町内会で、全86町内会(当時)の約6割にとどまっていた。震災から10年間で18町内会が組織を立ち上げ、今年2月末時点で9割弱の71町内会に広がった。

   16年5月には市自主防災組織連合会が発足。情報の共有と発信に軸足を置き、防災ノウハウの蓄積を図ってきた。

   設立当初から連合会会長を務める滝進さん(84)は「日頃から災害に備えて知恵や総力を結集し、次代に引き継ぐ思いにあふれていた」と振り返る。

   自主防の活動や訓練の内容も、震災を機に変化している。震災前は市による総合防災訓練が中心で、複数の自主防が主体となるような訓練はなかったが、11年以降は自主防が津波を想定した訓練を活発化させた。

   13年、15年には中心市街地の自主防などが、1000人規模の訓練を行った。震災前の訓練は地震や樽前山噴火の対応が中心だったが、新たに大津波を想定した訓練が展開された。

   自主防への市助成金も増加傾向で、11年度の11町内会・28万6000円に対し、20年度は新型コロナ禍の影響で訓練が減ったにもかかわらず27町内会・77万円。連合会と市危機管理室が連携し、防災講座や意見交換会などを開いてきた。

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   しかし、実際には防災意識や知識、役員の練度は、地域間で格差がある。関係者が指摘する理由の一つが、高齢化や人口減少による成り手不足。町内会によっては役員が足りず、町内会活動そのものが滞る。防災力の低下が懸念される。

   この10年間で市と地域住民、自衛隊などが連携した大規模訓練も展開しているが、滝会長は「実際に災害が発生した際、町内会役員が迅速に動けるかどうかが重要」と指摘。「小規模でも訓練を定期的に行うことが大切」と訴える。

   マンパワー不足が影を落とす中、連合会の企画立案を担う専門委員会会長の新谷新一さん(72)は「防災ノウハウを持った市民らが、各町内会の防災訓練などに出向き、必要なアドバイスをして、地域の連携と防災力向上につなげる」などの解決案を模索する。

   新型コロナウイルスの影響で、21年度の活動がどこまでできるか不透明だが、滝会長は「改めて自分の身を守るために必要な持ち物、行動、心構えなどを確認し合う1年になれば」と強調。避難所運営の感染対策など新たな備えを充実させつつ、自助、共助のさらなる深化を目指す。

  (半澤孝平)

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