今年1月、長野県で全国高校総合体育大会冬季大会が開かれた。苫小牧東高校アイスホッケー部の主将だった仲見颯太=なかみ・そうた=(18)は、インターネット配信された各試合の動画を食い入るように見詰めた。「うらやましい」―。思わず本音が漏れた。
2年生だった2020年1月の高校総体で5年ぶりの8強進出を経験した。その後、主将となって臨んだ南北海道新人大会では、当時部員10人の少数精鋭チームをCFとして先導し3位。満を持した昨年10月の南大会では1勝もできず最下位に沈んだ。
高校総体の予選に当たる北海道選手権(20年12月23~26日)で再起を図ろうとしていた同1日、チームメートから新型コロナの感染拡大に伴う大会中止を知らされた。「最初は半信半疑だった」と言う。
その後、田中渓也監督から中止の決定を伝えられ「頭が真っ白になった」。高校総体の道代表権は同じく感染症の影響で中止された道選抜大会(11月、釧路市)に出場を予定していた8校に付与された。苫東は南大会で最下位だったため、同大会の出場を逃していた。思わぬ形で全国挑戦の望みが絶たれることになった。
道選手権中止決定の翌日、5人の同級生を集めミーティングを開いた。「このままじゃ終わりたくない」と意見はすぐさま一致し、選手権を見据えて月内に4回組まれていた練習試合に参加したいと田中監督に願い出た。高校総体出場が決まっているチームを倒し、「自分たちこそ高校総体にふさわしいチームだと証明したかった」からだ。
最初に苫小牧工業戦で勝利。本来は公式戦勝利の際に行う部伝統の「勝った節」を後輩たちと一緒に歌った。続く北海道栄戦は引き分け。その後の2試合は惜しくも敗れたが、「監督や後輩たちが3年生の思いを尊重してくれたおかげで悔いなく終えることができた」と笑みを浮かべた。
4月からは憧れだった早稲田大の学生となり、高校時代と変わらず文武両道にまい進していく。「東よりもさらに伝統があって、アイスホッケーのレベルも高い。練習から精いっぱい努力して、名を残したい」と言う。
コロナ禍で得た教訓も、大学の部活動で必ず生かす。「特定の大会にだけ照準を合わせてはいけないことを思い知らされた。これからは一戦一戦を大切に、常に勝つ意識を忘れないでプレーする」と固く誓った。