苫小牧南高校女子バレーボール部の佐藤里咲=さとう・りさ=(18)は、4月から北海道職員として社会人の第一歩を踏み出す。新型コロナウイルス禍を乗り越え、「人のためになる仕事がしたい」と思い描いてきた夢を見事にかなえた。ただ、高校生スポーツ部員として迎えた競技の締めくくり方には寂しさを覚えたが、すぐに始まる新生活を真っすぐに見据えている。
「いい声、いい顔、いいプレー」。南高バレー部のモットーを体現できる明るく元気なムードメーカーは、アタッカーとして1年生から主力を担ってきた。昨年1月の北海道新人大会苫小牧予選会では準優勝。下級生にも実力者がそろい、戦力充実の中で迎えた今年度は、念願の全道大会出場を果たそうと意欲をかき立てていた。
新型コロナで2度の学校休校に伴う部活動停止に陥っても「何とかなる」と前向きに捉え、孤独に負けず自主トレーニングに励んだ。公務員試験を見据えた勉強にも、自然と集中力がみなぎった。
しかし、自粛期間中だった昨年4月26日に全国高校総合体育大会の中止が決定。各種の地区、道大会実施も相次いで見送られた。「3年間やってきたことは全部無意味だったんだ」。そこから悲嘆に暮れ、試験勉強すら手につかない日が続いた。「何回も公務員になることを諦めようと思った」
折れそうな心の支えになったのは、同じく感染症によって集大成の舞台を奪われたバスケットボール部や陸上部に居た公務員志望仲間だった。「最後まで頑張ってみようよ」。温かい励ましの声が夢に前進するための原動力になった。
部活動からしばし離れていたが、就職や大学受験を控えた同学年の部員3人と話し合い、全日本高校選手権(21年1月、東京)の予選に当たる昨年10月の地区大会参加を決めた。ほぼぶっつけ本番ながら、東胆振の女子6チームによるトーナメント戦で健闘の3位。「最後の最後に3年生全員で出場できたのは良かった」とした半面、「こんな形で高校バレーが終わってしまうのか」と心は晴れなかった。
就職を機に大好きなバレーボールとは再び距離を置くことになりそうだ。それでも「競技を通じて培った人とのつながりは、これからも大切にしていきたい」と言う。
コロナ禍の経験を基に、実社会へ出て行く決意も新たにする。「常に関わる人たちの立場に立って、どんなことにも寄り添える職員になりたい」と力強く語った。