「すべて税金なので、一定の条件を付けてやるのが賢明」―。開会中の苫小牧市議会定例会で、新型コロナウイルスに伴う市の対策をめぐり、岩倉博文市長がそんな風に答弁する一幕があった。市議が現状の課題を挙げ、追加の支援を迫る。市は限られた財源の下、立案した施策の意義を説く。それぞれ正当性を主張し合う展開。助けを求めているにもかかわらず、条件から漏れる人をどう救うのか―。悩ましい判断が浮き彫りになる。
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2月18日に2020年度一般会計補正予算が成立した段階で、市がコロナ対策に投じた予算は総額218億3000万円。約8割が国民1人当たり10万円が給付された特別定額給付金事業だが、市独自の一般財源も総額8億1000万円をつぎ込んだ。国の地方創生臨時交付金や道の補助金を活用しつつ、市の貯金に当たる財政調整基金(財調)を取り崩し、19年度決算剰余金からも捻出した。
コロナ禍は財政事情も左右する。「とまこまい港まつり」や「とまこまいスケートまつり」など代表的なイベントを含め、コロナの感染拡大で事業の中止も相次ぎ、20年度予算の執行残は1億5000万円に上る見通し。一方で景気後退を背景に、21年度当初予算案の市税収入は大幅に落ち込み、前年度当初比9億円減の267億円と試算。事業化の財源確保に厳しさ、難しさが付きまとう。
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「コロナ前」から人口減少により、税収減の危機感は漂っていた。市が19年2月に公表した市財政基盤安定化計画セカンドステージの推計では、27年度の年間市税収入は254億円となり、17年度決算の279億円と比べ25億円減を示す。
ただ、近年は共働き世帯や就労高齢者などの納税義務者が増え、19年度まで270億円超をキープ。経常収支比率や将来負担比率などの財政指標も、目標管理内で健全な財政運営を維持してきた。コロナ禍はそんな財政基盤をも揺るがそうとしている。
21年度予算案では、市の政策に絡む主要事業の歳出を31億円圧縮し、164億円の計上にとどめながら、各基金を崩す財源対策は20億円規模を余儀なくされた。財政秩序の目標「財調20億円の維持」もままならない事態を招いた。
議会質疑で岩倉市長は、財政秩序を守りながら行政課題に対応する考えを示しつつ、「最優先は感染症対策」と強調した。21年度予算案で予備費を1億円積み増して柔軟な対応を可能にし、今定例会中の追加補正を予定するなど「さまざまな財源を模索し、しっかり対応したい」と話す。
市はこの1年間を通してコロナ対策支援制度などの事業化に向けたノウハウを蓄積し、対応もスピード感を増している。先行きが不透明な「財政苦難の時代」を迎え、コロナ収束が見通せない中、市民生活や企業活動に寄り添った市政運営への期待を背負う。
(終わり)
(この企画は河村俊之が担当しました)