苫小牧市内の剣道道場、剣志会顧問の田谷行雄さん(92)=錬士6段=が苫小牧剣道連盟では現役最高齢の指導者として活躍中だ。児童期に打ち込んだ剣道を50代から再開した異色の剣士は「動ける限りは指導を続けていきたい」と元気いっぱいに語った。
茨城県出身の田谷さんは日本鉱業(現・JX金属)に就職。1971年に設立された関連会社の苫小牧ケミカル(現・JX金属苫小牧ケミカル)に出向すると同時に苫小牧に移り住んだ。
最初に剣道を始めたのは小学生の頃で、「当時は剣道か柔道をやるのは当たり前だった。私は背が低かったので剣道を選んだ」と振り返る。終戦を機に竹刀を置いていたが、苫小牧移住後、50代になってから通勤中に門下生募集の看板を見掛けたことがきっかけで、道場の剣心館に入門した。
1981年に初段に合格するとわずか5年で4段に到達。2001年には錬士6段を取得した。「基本が分かっていたのですぐに上達した」と回顧した。
初代代表者からの要請を受けて指導するようになった剣志会では2代目代表を引き継ぎ、道場を取り仕切った。顧問となった現在は小・中学生13人が所属して週2回、苫小牧西小体育館で稽古をつけている。
3代目代表の横山晴行さん(73)は「田谷さんは稽古で子どもたちより大きな声を出している」と感心する。小学3年から道場に通う佐藤佑真(苫小牧西小6年)は「立ち合いの相手にもなってくれて優しく教えてくれる」と話していた。
生涯にわたってスポーツに意欲的に取り組んできた。1980年の苫小牧市民マラソンの50歳以上の部で準優勝し、81年に市内で開かれたクロスカントリー大会の50歳以上の部で優勝経験も持つ。
剣道以外では日新温水プールにほぼ連日通い、100メートル泳ぐことを欠かさない。「運動は最大の趣味なので無理のない範囲で続けている」。武芸が続く秘訣(ひけつ)について「道場の子どもたちから、たくさんパワーをもらえるからやめられない」と目を細めながら語った。