新型コロナウイルス感染の「第1波」が道内に到来した昨年3月上旬、苫小牧市は影響の実態把握を本格化させた。コロナ禍で止まりかねない経済に危機感を強め、岩倉博文市長や2人の副市長、担当職員は公式行事などの相次ぐ中止で空いた時間を生かし、業界団体などからの聞き取りに走った。「まだ影響はないという業界もあったが、小規模事業者は人の流れの変化に打撃を受けていた」と担当者は振り返る。
3月9日には市役所本庁舎に緊急相談窓口を開設(現在は9階緊急経済対策給付金室で対応)。同26日に「小規模事業者向けパッケージ」と銘打った支援策第1弾を発表した。すでに市議会で2020年度当初予算が成立していたが、貯金に当たる財政調整基金から約5200万円を取り崩して専決処分で財源を確保し、4月1日から申請を受け付けた。緊急性や深刻さを肌で感じての素早い対応だった。
第1弾は資金繰りの相談が増えた飲食業を中心に小規模事業者に特化した支援メニューを構築した。これまで融資の活用に消極的だった事業者の経済的、心理的負担にも配慮し、販路拡大事業に最大10万円を給付する新規事業の他、既存事業の店舗改装費補助も最大50万円に拡充した。
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市は▽感染拡大防止▽地域経済対策▽子どもたちの日々(その後「健やかな日常」に変更)―を柱に据え、国の交付金や道の補助金の動向を見極めながら対策を繰り広げた。
5月には支援策第2弾となる緊急経済対策に約178億円を予算化した。国民に一律10万円を給付する国の特別定額給付金事業を含むが、専決処分としては異例の高額だった。第1弾の申請も想定を上回り、5000万円を増額補正して申請枠を広げた。
6、9、12月と市議会定例会ごとにコロナ関連の補正予算を提案し、支援の幅を着実に広げた。7月には臨時会も招集して最大60%のプレミアム(割り増し)付き商品券事業を目玉に、約26億円の支援事業を成立させた。
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しかし、年末年始に胆振管内で感染が再拡大。忘年会や新年会の自粛ムードで客足が遠のき、書き入れ時となるはずの繁華街は静まりかえった。市は今年1月、深刻な打撃を受けた飲食店を中心に、10万円を支給する新たな対策に踏み切った。国がコロナ対策に充てる3次補正予算の成立前で、事業費の全額約9800万円を市の一般財源で賄った。
スピード感を重視して施策を展開しても、次から次へと支援が必要になる。現在開会中の市議会定例会でも、追加支援の議論が交わされている。限られた財源の下、後手に回らず適切な対策をどう講じるか―。感染収束が見えない中、難しいかじ取りが続く。
(コロナ検証班)
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コロナ禍はさまざまな形で市民生活や地域経済に影響を与えた。支援する側の行政に焦点を当て、対策の在り方を検証する。