郷愁にじませる風景

  • 彩のひみつ 苫小牧市美術博物館収蔵品展より, 特集
  • 2021年2月25日
遠藤ミマン「藍の親馬仔馬」 1975年、油彩・キャンバス

  苫小牧市美術博物館で3月7日まで収蔵品展「色と絵~彩のひみつ~」が開かれている。同館が収蔵する絵画の色彩に着目した企画で、北川豊、砂田友治、福井正治など苫小牧市ゆかりの画家の作品が並ぶ。同館学芸員の大谷明子さんに展示作品の中から選んだ1点について解説してもらう。

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   ~「藍の親馬仔馬」遠藤ミマン~

   樽前山を背景に、草をはむ馬の親子が描かれている。作品名にもある藍は、植物の藍から染料が取られ、古くから染物に用いられてきた。藍から得られる色は、その最も薄い色である「かめのぞき」から染める段階によって色が変わっていく。

   本作でも、藍色を基調として多数の色が重ねられ、移ろいゆく穏やかな時の流れが表される。藍色の柔らかな線で縁取られた山、原野、馬はのどかな風景に郷愁をにじませている。

   作者の遠藤ミマン(1913~2004)は、初期作品の抑制の効いた色調による力強い作風を経て、後期には開放的で華やかな表現へと展開していく。遠藤は知人との会話で、独自の「ユウフツカラフル論」を展開している。それによれば「トマコマイは勇払原野にあるから、勇払カラーというべきだが、実はまことに憂うつカラーそのもの、さくばくたる灰色の景観だ…精神までが憂うつカラーに閉ざされる。これをはね飛ばしたいのだ」という。

   画家ならではのフィルターを通して描かれた本作を見るとき、感受性が刺激されて現実の風景も色づいて感じられるようだ。気分がふさぎ込みがちな現代においても、その作品世界は私たちに改めて新たな気づきを与えてくれるのではないだろうか。

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   午前9時半~午後5時。月曜休館。観覧料は一般300円、高校・大学生200円、中学生以下無料。

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