道の駅ウトナイ湖(苫小牧市植苗)の観光案内所で、地域情報を発信しているパート職員の佐藤恭子さん(40)。道内外の観光客らが気軽に立ち寄り、交流する日常を新型コロナウイルス禍が奪った。当たり前だった景色が変わった1年だったからでこそ「人とのつながりを実感できた」と強調する。
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道の駅は昨年、コロナの影響で3月4~20日、5月1~15日の2度にわたって休館。旅行好きの佐藤さんは、夫と自宅で過ごす「巣ごもり」時間が増えた。たまっていた観光雑誌やパンフレットの「断捨離」、料理など趣味の時間を楽しむようにした。
感染拡大が一時的に落ち着いた7月から、政府が観光需要喚起策「Go To トラベル」を実施。同駅にもにぎわいが徐々に戻ったが、佐藤さんは「完全にコロナが終息した時の準備期間」と冷静に捉えた。
プライベートの旅行では遠出を自粛する代わりに近場の道の駅を巡ったり、開業間もない白老町の民族共生象徴空間(ウポポイ)に足を運んだりした。趣味と仕事を兼ねて見聞を広め、「道の駅ウトナイ湖の魅力をどう発信するか考えていた。時間があるからできた」と振り返る。
昨年秋、道内で感染が再び拡大。道の駅を訪れる人は目に見えて減っていったが、常連客などから「また会いたいね」と書かれた年賀状やはがきが届いた。「会えなくてもつながりが消えるわけではない」と思った。
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出口が見えない日々が続き、「自分が感染して人にうつしてしまったらどうしよう」と不安にかられることもあったが、昨年6月に飼い始めた子猫2匹がそんな心を癒やしてくれたという。得意だったイラストの腕を生かし、人気漫画「鬼滅の刃」のキャラクターを紙に描いて案内所近くの掲示板に張った。予想以上に子どもらに喜ばれ、「こちらもうれしくなった」。コロナ下でも人のぬくもりに触れる機会は少なくなかった。
当たり前だったこれまでの日常が変わり、苦しい思いをした人がたくさんいた。自分を取り巻くすべての人たちへの思いがより強くなった1年。「仲間や家族、お客さまには心も体も健康でいてほしい」と願う。
(平沖崇徳)