「財政苦難時代を迎えた」―。10日、苫小牧市役所で開かれた市の2021年度当初予算案を発表する記者会見。岩倉博文市長はそんな言葉を交え、新型コロナウイルス流行が税収減という形で予算編成にも暗い影を落とし始めていることを力説した。
一般会計は20年度比3・2%減の788億7500万円。特別会計と企業会計を合わせた総額も同1・5%減の1343億1600万円で、4年ぶりのマイナスとなった。
一般会計で歳入の約3割を占める市税収入が、同約9億円減の267億円にとどまると試算。数年前から人口減少時代に突入していたが、就労高齢者や共働き世帯の増加を背景に個人市民税などは好調で過去5年間、決算段階で270億円を割ることはなかった。それが一転して異例の悪化予測。財政部は「コロナの状況次第では今後さらに悪化することもあり得る」と警戒感を示す。
主要事業費は、同31億円減の164億円。20年度までに防災行政無線の屋外スピーカー設置範囲拡大、沼ノ端第2埋め立て処分場整備、老朽化した学校施設の改築や増築などの大型事業が一段落したことが主因だが、それでも各種基金の使用を避けられず「基金の取り崩しは過去10年間で最大規模」(財政部)となった。
市の貯金に当たる財政調整基金(財調)だけで15億円をはき出し、21年度末には19億4000万円となる見通し。岩倉市長が「秩序ライン」とする目標の「財調20億円の維持」は困難な情勢だ。
同日の会見で、市長は「振り返って、瞬間風速だった―と思ってもらえるようできるだけ早い段階で秩序ラインに戻したい」と強調。06年の市長就任当初、5000万円程度だった財調を地道に積み上げたことへの自負をのぞかせながら”一丁目一番地”に位置付ける財政基盤の強化への意欲を改めて示した。
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一方で、注目しなければならないのが借金返済に充てる「公債費」の推移。ここ数年、市債を発行して推進してきた大型事業のうち、償還時期を迎える事業が出始めている。21年度は20年度よりも2億円以上多い75億円。まだ歳出全体の9%程度にとどまるが、気になる動きだ。
市は毎年度、起債の伴う事業費をシミュレーション。償還の平準化を意識した財政運営を心掛ける。20年度の決算見込み段階では▽経常収支比率▽実質公債費比率▽将来負担比率―の三つの財政指標の各数値は目標範囲内。21年度の歳入のうち、市債は20年度比11億円減の89億円に抑制し、後に国から手当てされる臨時財政対策債の比率を2割から4割に引き上げた。
そんな中、1970~80年代にまちの発展と共に建設が集中した施設やインフラの更新も待ったなし。市民会館改築に伴う市民ホール(仮称)整備だけで概算事業費70億~90億円を見込む。そこにコロナが直撃。健全財政を保ちつつ、大胆な対策も時に求められる今、市の財政運営はかつてない難局を迎えている。
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苫小牧市の21年度予算案を財政、コロナ対策、市長公約の視点から検証する。