国立アイヌ民族博物館で開催中の収蔵資料展「イコロ」では、ニ(木材)のコーナーでマキリ(小刀)とイタ(盆)を展示している。ここでは実物資料と最新の分析機器であるX線コンピューター断層撮影装置(CT)で撮影した画像を使った展示をしており、今回はそれについて紹介したい。
アイヌ民族は生活の中で、用途に合った木材を用いて生活に必要な道具を作製している。多くの場合そうした道具は、文様の彫刻や装飾が施されている。このコーナーでは、旧一般財団法人アイヌ民族博物館(通称ポロトコタン)が閉館後に収集した資料を選定した。スペースの都合もあり、マキリ4点、イタ3点の展示となっている。また、CTを使い、それぞれの断面図を画像にしたパネルを展示している。
そもそも断面図については、壊すか、壊れている場合や、もしくは製作者しか分からないものである。ただ、壊すということは資料を保管し、未来に残す博物館としては絶対にやってはいけないことだが、CTを使えばそういったことをせずに断面図を見ることができる。
マキリに関してはさやの縦、横の断面図を画像にして、木材の他に樹皮、鹿角を用いたものを展示しているので、それぞれの断面図の違いを見ることができる。
イタに関しても同じく縦、横の断面図を画像にしているが、1点だけ両面に彫刻をしているものを展示している。このイタを選定した経緯については、資料を触ってみたところ、真ん中部分がやや薄いという印象を受けたため、CTを使えば面白そうだと思ったからである。実際に断面図を見たところ、その部分の厚さが0・2ミリ程度しかないことが分かった。
資料だけではなく、普段見ることができない断面図を画像にして展示しているので、ぜひ見比べていただき、それぞれに込められた技術を感じていただければと思う。
(国立アイヌ民族博物館・竹内イネトプ学芸員)
※白老町の国立アイヌ民族博物館が開催中の収蔵資料展「イコロ―資料にみる素材と技」(第2期は3月21日まで)をテーマにした本企画は、毎月第2・第4土曜日に掲載します。