高齢者向け住宅に保育所や学童保育を併設し、高齢者と子育て支援の双方を担う複合施設、さらには障害者や大学生にも対象を広げて多様な世代が交流する拠点づくりを進める動きが各地で広がっている。苫小牧市でも子育てと介護に焦点を当て、まちづくりを考える検討会が発足した。苫小牧港開発が呼び掛け、市や金融機関、不動産会社が参加する。
苫小牧でまちづくりと言えば、まず思い浮かぶのがJR苫小牧駅前の旧商業施設エガオ。土地の一部を所有する大東開発の訴えを全面的に認め、市に損害賠償を命じた札幌地裁室蘭支部の判決から1年がたった。札幌高裁に舞台を移し審理は続いているが、和解協議に進展は見られず、中心市街地を台無しにしているエガオビルの姿は何も変わっていない。否、廃虚化は進む一方だ。
今回の検討会は、まちづくり全般ではなく、子育てのしやすさと高齢者になっても安心して住み続けられる環境に的を絞って検討するという。それが、まちとしての魅力を高め、「選ばれるまち」になるための重要な要素だと定義している。
抽象的な「まちづくり」ではなく、明確に子育てと介護を打ち出したことで、議論は分かりやすくなると思う。実際に取り組みを展開している全国の事業者からじかに話も聞く。あの駅前のままでは「選ばれるまち」になりようがないという諦めはいったん脇に置き、検討会の成り行きを注視したい。(吉)