苫小牧市の水道水と厚真町の酒米彗星(すいせい)を原料とする地酒「美苫」も、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けている。飲食店を中心に需要が落ち込み、取扱店30店で在庫の消費が遅れた。新酒の醸造、発売も例年より3カ月ずれ込む見通し。苫小牧酒販協同組合美苫みのり会の平田幸彦部会長は「イベント中止の影響も大きかった」と振り返る。
美苫の新酒販売は毎年12月。酒米の作付けは例年通りで5月に厚真町で田植え、9月に稲刈りを行ったが、苫小牧市高丘浄水場で行う取水作業は、従来の11月から今年1月に変更した。2月に小樽市の田中酒造で仕込み作業を行い、販売は3月下旬を予定している。
飲食店の売り上げ減、巣ごもり消費の拡大により、酒販業者の販売動向も変化した。昨年3月から飲食店向けの卸売が低迷。とまこまい港まつりをはじめとする地域の祭り、イベントが相次いで中止になり、繁忙期の8月は売り上げ減が深刻化した。
平田部会長が経営する酒販店も、飲食店向けの販売量が前年比5割減となった一方、店舗の利用客は3割増えた。今年も1月は新年会向けの需要が激減し、3、4月の歓送迎会シーズンも感染動向によっては厳しくなると予測。取引先から2月以降、休業するとの連絡も入っている。
そんな中で、美苫は今年販売開始から20年目の節目を迎える。初めてスパークリングタイプ(360ミリリットル)を限定700本醸造するほか、記念ラベルを貼ったしぼりたて(720ミリリットル)も約1000本売り出す方針。6月には飲食店での取り扱いを広げようと、従来の純米吟醸よりも低価格帯の純米酒を発売する。
同会は2001年に市民有志で発足した地酒を造ろう会が前身。18年9月の胆振東部地震など幾多の困難を乗り越えてきた。平田部会長は「胆振東部地震後のようなV字回復はしない」と冷静に受け止めつつ「ワクチンの接種効果が高まれば徐々に酒販類の売り上げも伸びる」と期待を込めた。