氷上ワカサギ釣りが最盛期だ。苫小牧市の人気スポット、樽前の錦大沼は連日、愛好者や家族連れが多く訪れている。ワカサギ釣り初心者の釣り倶楽部担当が1月下旬、チャレンジした。
用意したのは、2000円前後の市販のワカサギ釣りセット(リール付きのさおと仕掛け、さお台)と小型のはさみ、餌を刻むためのカッター、餌箱、折り畳み椅子、交換用の仕掛け、重り(5グラム前後)、魚を入れる容器、穴に張る氷片をすくうおたま。道具は全て中型の保冷バッグに収まった。
肝心なのは十分な寒さ対策。静寂の森の氷原と見上げる麗しの樽前山は惚れ直すほどの美しさだが、氷上を舞う風の冷たさは一級。使い切りカイロは必携だ。
釣り場に着いてポイントを選ぶ。小さな三脚が置かれている所は氷上の既存の穴。訪ねたのは休日の午後だから、午前の釣り人が開けた穴が幾つもある。水深が浅めの岸辺にほど近い所に陣取った。
期待を膨らませて準備を始めたが、記者は太くて高強度の糸を使う海釣り派のため、ワカサギ仕掛けの糸の細さと針の小ささには難儀した。糸の結節、餌付けなど、かじかむ指先に老眼もあいまって悪戦苦闘。貴重な時間を浪費した。
釣りの初めは魚の棚の確認だ。仕掛けを一度着底させ、底から順次仕掛けの位置を上げて探る。魚信のある層が棚だ。この日は底層で反応がある。さおを小刻みに上下して誘うと、応えるように小さくツンツンとさお先に魚からの”信号”。餌をつついている。水面の糸が横に揺れた瞬間に合わせてさおを上げると「付いてる、付いてる」。釣り開始早々、スリムできれいな6センチほどのワカサギが氷上にぴちぴちはねた。
しかし魚の活性は低めで魚信は散発的。食いも浅く、針に乗らない。ダブルで上がったのは1度だけだった。2時間弱の釣果は8匹で、周囲の釣り人も苦戦のよう。仕掛けは魚のサイズを考えて0・8号針の5本仕立て。餌は赤サシを半分に切って使った。貧果とはいえ繊細な釣りの面白さを堪能できた。プルプル揺れるさおの動きは、氷に閉ざされた沼で元気に生きる魚とつながったサイン。その瞬間は寒さを忘れ、魚信のわくわくどきどきと釣り上げた時の充実感は増した。
ワカサギは空揚げにし、晩酌のあてにした。8匹という希少価値も付いて味は格別。自分で釣った満足感がうま味を倍加させる。
管理者によると、今季は食いの立つ時間帯は朝に限らない。300匹釣る常連もいれば、魚の顔を見られない人もいるという。魚は、小さくても侮れない。