鮮魚取扱店を中心に43事業所で構成する、苫小牧魚菜買受人協同組合の石垣孝幸理事長は「コロナで本当に厳しいが商機はある。苫小牧を魚でもっとPRしたい」と語る。苫小牧は沖合で黒潮と親潮がぶつかり、海岸は変化が少ない砂浜という絶好の漁場で、年間100種類以上の魚介類が水揚げされる。
昨年は各店がコロナ禍の影響を受け、特に居酒屋など飲食店に魚介類を納品している店舗は大打撃。石垣理事長は「2月から客がいなくなり、売り上げは3割から半分ぐらい減った。(国の緊急事態宣言が終わった)6月から厳しさは少し緩んだが、秋以降はまた客が減った」と振り返る。
ホッキ貝などの高級食材は、関東圏を中心とした飲食店需要が減って一時は休漁するほど価格が低迷したが、公設市場の競りに毎朝足を運んでできる範囲で買い支えを行った。「苦しいときはみんな同じ。共存して頑張るためにも生産者、市場、店が三位一体にならないと」と力を込める。
外出自粛などを踏まえてインターネット交流サイト(SNS)を積極的に活用する店もあったが、「店もお得意さんも高齢化が進み、SNSをやる方は少ない」のが実情。電話で得意先の要望や注文を聞き、店から魚介情報を伝える「御用聞き」に活路を見いだす店舗も多かった。
苫小牧漁港ホッキまつりも中止になり、組合活動もほぼ実施できない中、加盟店でおいしい魚を消費者に薦める毎月第3木曜日の「魚の日」だけは欠かさなかった。「市民に安心、安全、新鮮な魚を提供するのがわれわれの役目」と店頭にのぼりを掲げ「苫小牧はいい魚があるのが強み。食べてもらえれば魅力は伝わる」と強調する。
石垣理事長が経営する店舗では、全国各地のリピーター約1万6000人にダイレクトメールを発送し続け、取り寄せや贈答品の発送などにつなげている。昨年12月には道央自動車道・苫小牧中央インターチェンジが開通。「コロナが収まれば、きっといい影響が出る。苫小牧の良さを信じて発信し続ければ可能性は広がる」と話す。