70回目の節目を迎えた全国高校総体冬季大会が開幕した。ただ、高校生憧れの舞台はいつもと装いが違う。全国から訪れる観客、生徒たちの声援―。当たり前だった光景が、新型コロナウイルスの影響ですべて失われた。
今大会は感染症拡大防止のため、選手保護者らを含めた完全無観客での開催が今月中旬に決まった。記者ら報道陣は、主催者側の尽力もあって健康チェックシート提出など厳しい手順を踏んだ上で取材活動が許可されている。
21日、長野冬季五輪(1998年)の開催場所にもなったスピードスケート会場のエムウエーブ駐車場で、女子選手と祖父母らしき老夫婦が談笑する姿を見かけた。しばらくして老夫婦は車に乗り込み会場を後にした。
助手席から身を乗り出し手を振る女性。選手は駐車場の外まで車を追い掛け、姿が見えなくなるまで手を振り見送っていた。ナンバーから察するに岐阜県内から150キロ以上ある冬道を走り、孫の激励に訪れたのか。勇姿を間近で見たかったに違いない。やるせない気持ちになった。
現地に行って応援を予定していた人は東胆振にもいるはず。コロナ禍に負けず奮闘する選手たちの姿を、いつも以上に紙面で伝えられるよう努力したい。
(北畠授)