ウトナイ湖野生鳥獣保護センターには、毎年60種ほどの傷病鳥が搬入されますが、種によっては、その生態などから運び込まれやすい時期が存在します。
ちょうど冬になると、搬入が多くなる鳥の一つに、シメ(スズメ目アトリ科)が挙げられます。昨シーズンでは立て続けに、6羽もの搬入がありました。
シメは、北海道では1年を通し観察できる野鳥で、夏は主に森林で子育てを行っていますが、冬季になると人里近くにやってくることから、街路樹や庭先などで見掛けやすくなります。しかし私たちの生活空間に来てしまう季節だからこそ、建物や窓ガラスにぶつかり、保護される機会も増えてしまうのです。
昨年保護された6羽のシメたちも、すべてが人工物への衝突事故が原因でした。そのうちの1羽は、衝突の衝撃で呼吸器を損傷し重傷でしたが、残りの5羽に至っては、保護の必要はなかったかも、と思うくらい搬入時にはすでに回復しており、診察のために触れようものなら、その立派なくちばしでかみついてくるほどでした。私自身、これまで100羽を超えるシメの保護の経験がありますが、そのくちばしの力は強烈で、自然界では堅い実を割って食べるのですから当然かもしれませんが、軍手を二重にしても、思い切りかまれればくちばしの痕はしっかり残りますし、素手でかまれれば血がにじむこともあります。
また、鋭さのある目からも感じられるように大変気も強く、相手が人であろうと容赦なくかみ付いてきます。シメの搬入となると、ついこちらも身構えてしまいますが、やはり彼らも他の傷病鳥と同様に、人間社会が原因で被害に遭った側であり、ただ必死に生きようとしているだけなのです。
これからまだまだ寒い日が続きます。もしかしたら皆さまも飛べないシメに遭遇するかもしれません。ですが、一過性の脳振とうを起こしているだけのことが多いので、触れることなく、そのまま様子を見ていただければ、しばらくして飛んでいくかと思われます。ただ、明らかな外傷等で保護の必要がある際は、どうかくちばしには十分お気を付けください。彼らはきっと、身を守るために全力で向かってくるはずですから。
(ウトナイ湖野生鳥獣保護センター・山田智子獣医師)