アイヌ文化の復興と発信のナショナルセンターとして開業し、半年を迎えたウポポイについて、地元の白老アイヌ協会はどう受け止めているか。山丸和幸理事長(72)に聞いた。
―ウポポイの半年をどう受け止めているか。
「アイヌ文化伝承の場が白老に造られたことは、とても喜ばしく思っている。ウポポイで働く若い職員が伝統文化を学び、次代につなげることを期待しており、職員の学びの意欲も強い。だが、施設が本当の意味で文化復興の拠点と成り得るか疑問もあるし、活動はまだ不十分だと思う。組織の上に立つ者が復興への気構えや覚悟、方向性を職員にきちんと示してほしい」
―文化伝承の活動をどう見ているか。
「踊りを一例に取れば、鑑賞に重きを置いてショーアップし過ぎているように感じる。生活の中から生まれた踊りはもっと泥臭いし、多様性がある。踊りに限らず、全体的にアイヌ文化のリアリティーがあまり感じられない。先日、園内のチセ(かやぶき伝統家屋)をのぞくと、来場者の目に付く所にパソコンが置いてあった。伝統的空間にそぐわず、基本の部分でどうなのかと思った。文化の復興と発展の取り組みがウポポイの本質。新型コロナが収束した後、多くの人に足を運んでもらい、アイヌ民族や文化への国民理解を得るためにも今やらなければならないことがあるはずだ」
―文化復興の上で重要なことは。
「先人が継承したアイヌの営み、精神文化について常に学び、本物に近づける努力が必要だ。各地の伝承者との関わりを深め、伝統を基盤にアイヌ文化を発展させてほしい。私が旧アイヌ民族博物館に勤めていた頃、静内(現新ひだか町)の伝承者・故織田ステノさんから『まね事では駄目だ。アイヌの精神文化に真摯(しんし)に向き合わなければカムイ(神)が怒る』と言い聞かされた。そうした気持ちで学んでほしいし、若手職員が日常業務に追われて研修の機会を失わないよう人員体制を厚くすることを望みたい」