3種の樺が混生 温泉街までの道路沿い 違う個性 知れば愛着

  • 支笏湖日記, 特集
  • 2021年1月8日
紋別岳の山上に生えるダケカンバ

  

   苫小牧や千歳の市街から支笏湖へ向かう道中、温泉街まであと1キロ半ほどの辺りでしょうか、白っぽい樹皮の林が道路の両側に広がっています。美しい白樺林と言いたくなるところですが、実はここには3種類の樺(カンバ)の木が混生しています。シラカンバ、ウダイカンバ(マカバ)、ダケカンバです。一見よく似た3種ですが、それぞれに違った個性があります。

   真っ白な樹皮から一般に白樺と呼ばれるシラカンバは、直射日光や乾燥にめっぽう強く、山火事などで森林が失われた場所に真っ先に芽を出します。この道路沿いで見られる若木は、その性質から2004年の台風跡地に植樹されたものです。

   ウダイカンバは樹高30メートルにもなる大柄で風格を持った樹木で、道路沿いで最も目立つのはこの木です。樹皮は鈍い光沢を持つ銀白色で重厚感があります。

   ダケカンバは亜高山が主な生育地で、道路沿いではポツポツと見られるにすぎません。樹皮はベージュ色で、短冊のように薄く剥がれた皮がよくひらひらしています。

   温泉街裏手の紋別岳では、これらのカンバの仲間の個性を肌で感じることができます。

   登り始めてすぐはウダイカンバが多く、樹齢100年を超えていようかという立派なものも何本もあります。ところが、小一時間歩いた頃に周囲を見渡すとウダイカンバがめっきり少なくなり、入れ替わるように高所を好むダケカンバが増えます。さらに登り続けるとダケカンバに面白い変化が見られます。樹高が低くなり、幹や枝が曲がりくねったものが多くなるのです。

   山の上は風が強く、雪も大量に積もります。ダケカンバは真っすぐに伸びることのできない厳しい環境にあっても耐える強さとしなやかさを持っているのです。

   先駆者のシラカンバ、堂々たるウダイカンバ、風にも雪にも負けずのダケカンバ。個性を知ることで樹木に愛着が湧いてきます。

  (支笏湖ビジターセンター自然解説員 小野寺裕太)

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