―昨年を振り返って。
「新型コロナウイルス感染症が世界中で拡大し、経済の低迷で原油価格が大きく下落した。WTI(テキサス産軽質油価格、ニューヨーク原油先物市場の指標)が初のマイナスになり、お金を出してでも買ってもらう状況になったことは衝撃だった。2020年度の燃料需要は、ガソリンが前年度比約10%減、ジェット燃料は空港の国際線が動かず約40%減、灯油は例年並みになりそう。当製油所は地域で使っていただく石油製品の需要が大きく、フル稼働で生産を続けている」
―昨年は4年に1度の大規模定期補修工事シャットダウンメンテナンス(SDM)も行った。
「SDMは1年以上前から準備し、2月から感染予防策も考えてきたが、4月からコロナが道内で再拡大し、道民、市民から不安の声をいただいた。安全、安定操業関連に限定して4分の3規模とし、期間を延ばして動員人数を減らした。感染者ゼロを達成し、苫小牧モデルを構築できた」
―宿泊を除くSDM関連の経済が止まった。
「作業員はホテルと製油所の往復のみだった。現在はコロナ対策も分かってきており、次回以降は関係者と協議して改善したい。作業員の受け入れに対する考え方も飲食店によって異なる。感染対策をしていて『作業員は来てもいい』という店を事前にリストアップし、健康確認した作業員は身分が分かるカードを持って訪れれば、お互い気持ちよく利用できる」
―今後の展望、50年の脱炭素化社会実現は。
「出光はもともと燃料需要が低減していく前提で戦略を立てており、さらにスピードを上げて進める。収益の基盤を支える事業を改革し、より収益を出して成長分野に投資し、次世代事業を創出する戦略を展開する。当製油所は収益の基盤。安全・安定操業を継続しながら、国際マーケットでも勝てる競争力をさらに高める」
「(製油所隣地で実証試験を行う二酸化炭素を回収、貯留、有効利用する技術)CCS、CCUSとリンクしながら当製油所も変革したい。これまで暮らしを支える媒体が石油製品だったが、環境に伴って変わることは必要。出光はすべてのエネルギーに取り組んでおり、分散型の再生可能エネルギーなどで都市の発展にも寄与できる。石油製品を軸にしながら将来の道民、市民の皆さまの移動やエネルギー、暮らしを支える企業で在り続けたい」
メモ
北海道、東北、北陸に石油製品を供給するエネルギー拠点。敷地面積は212ヘクタール、札幌ドーム38個分。1973年操業開始。苫小牧市真砂町25の1。