―昨年を振り返って。
「新型コロナウイルスの影響抜きに語れない年。2019年に無段変速機(CVT)、ヤリス用のハイブリッドトランスアクスルの新ラインが立ち上がって『さあ、これから本格稼働』というタイミングで出鼻をくじかれた。3月から台数が減り始め、5、6両月は大きくダウン。一部ラインは1直稼働とし、トヨタ全体の取り組みで非稼働日も設定した」
「最初は中国向け製品の打撃が大きかったが、意外とその中国で社会の動きだしが早く、当社も7月から復調した。9月以降は前年実績を上回り、20年の生産台数はほぼ前年並み。19年の(トランスファー、CVT、トランスアクスル計)197万台に対し、20年は199万台。今売れている車(ヤリス)の部品を生産していることも幸運だった。トヨタグループ全体でも前年並み確保はあまりない」
―自動車産業の現状や課題、その影響と対策は。
「トヨタ本体を含めて自動車メーカーから『モビリティカンパニー』へ大きくかじを切ろうとする中、脱炭素化社会実現に向けて自動車の電動化も加速する。当社は従来エンジン車両の部品が多く、ハイブリッドを含めて電動ユニットは2割ほど。さらに今後は各国で現地生産化が加速する可能性もある。われわれを取り巻く環境は厳しい」
「これまでの延長線上で電動化に対応しつつ、次世代を担う人材育成に力を入れる。(菅政権の目玉政策)デジタル庁が発足するが、社内でもデジタル革新ワーキングを立ち上げ、いろんな挑戦の機会を設けたい。事務職、技術職にかかわらず、延長線上を超えた新しい分野に挑戦する人材を育てたい」
―今年の事業計画は。
「コロナで不透明な部分も多いが、今年も現人員(昨年12月1日現在3431人)を維持できそう。春にはCVTラインの能力を増強する。既存ラインの品質や稼働率をしっかり上げ、コスト競争力のある企業体質に磨き上げる。これまでは頑張ればトヨタから仕事をもらえたが、『トヨタ北海道で造らせたい』と選ばれる努力を続けたい」
「トヨタが50年の二酸化炭素(CO2)排出ゼロを目指しており、当社も春に太陽光発電を稼働させる。構内で工事を進めており、能力は2メガワットアワー。工場で使う電気使用量の1・8%。大したことはないだろうが、少しずつ取り組みを進める」
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2021年がスタートした。新型コロナウイルスの感染拡大が終息する気配が見えない中、苫小牧市内の企業トップは現状をどう捉え、新年をどう展望しているのか。インタビューした。
メモ
自動車部品製造の道内最大手。トヨタ自動車の100%出資で、1991年2月設立(竣工〈しゅんこう〉式を行った93年9月6日が創立記念日)。苫小牧市勇払145の1。