㊦ 「不満」から「承認」の気持ちへ 他人責めず、認め合うこと大切

中川貴史医師

  ▽人的側面での対応

   感染症を乗り越えるために必要なことをお伝えしていきたいと思います。

   まず、がむしゃらで必死な介護、防衛的な感情を「これでいいんだ」と安堵(あんど)するオープンマインドに切り替えることです。

   「われわれはやることをやるんだ」ということを施設や病院の利用者に理解してもらい、お互いに現場で理解し合うことが大事。これしかできないという「不満」から、やれることをやるという「承認」へ、気持ちを変えましょう。

   利用者が通常時のケアを受けられないことはたくさんありますが、これは仕方のないことです。家族や本人にしっかり理解していただきましょう。感染を拡大させ得る介護サービスやレクリエーションを中止することについても、理解してもらうことです。

   ▽見渡す視点を

   周りを広く見渡す視点を持った指揮官も必要です。現場で各職員の役割が混在してしまうと、冷静ではいられなくなる。ですから、ちょっと離れた所にいて、報告を聞き、正しい動きができるように管理する人をきちんと配置しましょう。

   さらに、しっかり計画を持ち、感染リスクをできるだけ避け、感染症を正しく恐れること。現状を正確に把握し、計画を改めて練ることが大事です。

   あとは、職員間で相手を理解し合い、「こんな大変な思いをしてやっているんだ」というリスペクトをしっかり持つこと。それが迅速な対応につながります。

   結果論だけでは語れませんが、予期せぬ副産物が得られるかもしれません。われわれが頑張ったおかげで、チームがまとまったんだ―ということをみんなで褒めたたえて、良いチームを作っていくことが大切になります。

   ▽今後の対応について

   クラスター(感染者集団)は、発生しないことに越したことはありませんが「万が一」というのは、どこでも起こり得ます。ですから、他者を責めない、そして皆さんが認め合い、励まし合ってエンパワーメントし合う。そうすることでしか、コロナ禍は乗り越えられません。

   「終わらない感染症はない。必ずいつか終わる。だからそこまで頑張ろう」ということを絶えず発信し続け、皆さんで仲間をリスペクトし合い、良いケアをしてもらえればと思います。

  (中川貴史医師)

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