高波被害で2015年1月から不通となっているJR日高線の鵡川―様似間(116キロ)が、21年4月1日付で廃止される。日高管内7町(日高町、平取町、新冠町、新ひだか町、浦河町、様似町、えりも町)が5年以上も議論を重ねた末の苦渋の決断として、復旧を断念した。1913年の開通から107年の歴史を持つ同線の8割が姿を消す。
7町は当初、沿線自治体協議会で鉄路の復旧に向けて活発に議論。国や道に支援を求める要望活動も重ねていたが2016年8月の台風で被災範囲が拡大すると、運行再開に暗雲が立ち込めた。JR北は、復旧の概算工事費が当初の38億円から86億円に膨らむと試算。復旧した場合の年間の維持費16億4000万円のうち、13億4000万円の負担を7町に求めた。
その後、同社は単独維持困難線区として10路線13線区を公表。同年12月に日高線鵡川―様似間の廃止・バス転換の方針を打ち出した。
7町は強く反発し、「JR日高線沿線地域の公共交通に関する調査・検討協議会」を設立。デュアル・モード・ビークル(DMV)やバス高速輸送システム(BRT)の導入について調査を行った。
しかし、DMVやBRTは導入費用が多額のためすぐに断念。▽全線復旧▽日高門別までの復旧▽バス転換―の3案で協議を続けたが、関係者からは「毎年多額の負担は厳しい」「全線バス転換してもいいのでは」といった本音も聞かれた。
不通が長期化する中で住民団体も地道に復旧を求める活動を続けたが、次第にバス転換を求める町が増加。今年10月にJR北と同線区の廃止に向けた同意書と覚書の締結式を行い、21年4月の廃止が決まった。
日高線は1913年、苫小牧軽便鉄道による苫小牧―佐瑠太(現富川)間の開設が始まり。37年に全線が開通した。貨物輸送や地域住民の足として長年、重要な役割を果たしてきたがマイカーの普及で、輸送密度は年々低下していった。
「関係機関と連携し、住民にバスを利用してもらう仕掛けづくりをしたい」と日高町村会の坂下一幸会長(様似町長)。沿線7町では4月から運行するバス路線に関する議論が進むが、町民からは「住民や専門家の意見を聞かない」などと不満の声も漏れる。
鉄路の不通から5年11カ月が経過し、沿線を自家用車で移動する住民が増えてきており、転換されるバスも赤字が続けば存続の可否が議論されるのは必至。住民に利用される路線づくりが欠かせない。地域振興も大きな課題で、沿線自治体は引き続き難しい対応を迫られている。
(室谷実)
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2020年も残りわずか。今年、地域であった大きな出来事を振り返る。