苫小牧市民生委員児童委員  大川芳子さん(68) 地域住民に頼りにされる見守り役  必要としてくれる声励みに活動16年 「元気なうちは続けたい」

  • ひと百人物語, 特集
  • 2020年12月19日
地域を見守り続ける大川さん
地域を見守り続ける大川さん

  生まれ育った地域で、見守り活動を続ける苫小牧市出身の大川芳子さん(68)。コロナ禍においても、市民生委員児童委員として地域住民の体調に気を配る。「どれだけ役に立てているのか」と謙遜しながらも、周囲からは頼りにされる存在だ。市内沼ノ端中央地区の約160世帯を担当。約30世帯ある1人暮らしの高齢者も「スーパーで会うと、気さくに声を掛けてくれる」と話す。

   民生委員になったのは、同地区の前任者から依頼を受けたため。当初は「大変そう」というイメージがあり断っていたが、母親に「頼まれたら引き受けるものだ。必要とされることがあるならやってみては」と背中を押され、52歳で委員(任期3年)になった。

   2期目の時、市営住宅に住む体の不自由な70代の独居高齢者が、ドアを閉めチェーンを掛けようとしたときに転んでしまった。隣人から「大きな音がした」と連絡を受け駆け付けたが、チェーンが掛かっていてドアが開かず、気が動転してしまった。「冷静に」と心の中で唱えながら管理人に連絡するも夜分でつながらず、警察に通報。警察から要請を受けたレスキュー隊が鍵を開けてくれた。高齢者は腰を打ったが軽傷で済んだ。長く続けていても「いつもこの事を思い出す。深刻な事態にならず本当に良かった」と振り返る。

   身寄りのない1人暮らしの高齢者が自宅で亡くなり、遺体の引き取りに立ち会ったこともあり、「委員の活動から学んだことはたくさんある」と語る。46歳から60歳まで、町内会の推薦で市の交通指導員も経験した。登下校する児童や生徒を見守り、住民と触れ合う中で信頼が築かれ、声を掛けられることも多くなった。

   現在は認知症の人や家族、地域住民など、誰でも参加が可能な「ほっとカフェ」(認知症カフェ)で、ボランティア活動にも取り組んでいる。新型コロナウイルス対策のため、委員活動は原則電話で行う。「感染症に限らず、この季節は体調を崩しやすい時期なので心配もあるが、今のところは皆さん元気そう」と語る表情からは、地域で頼りにされる優しい人柄がにじみ出る。

   大変そうだと尻込みしていた委員の活動も、16年続いた。「委員同士で支え合い、親睦を深めながら活動ができている。『やめないで』と言ってくれる地域の人もいてうれしい。私も単純だから」と笑顔を見せる。「勉強になることばかりだった。若い世代の人にも委員になってもらいたい」と期待を込めながらも、「どこまで続けることができ、どれほど役に立てるかは分からないが、元気なうちは続けたい」と自らの役割に改めて意欲を示した。

  (松原俊介)

   大川 芳子(おおかわ・よしこ) 1952(昭和27)年9月、苫小牧生まれ。結婚後、一時離れたが、半生を故郷で過ごしてきた。98年から2012年までは市の交通指導員、04年からは民生委員を務め、現在は6期目。苫小牧市沼ノ端中央在住。

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